領野間に渡る情報処理の理解は、脳という全体が1つのシステムとして機能している対象の理解には必須である。その為に、本研究では2光子カルシウムイメージングによる多領野間の情報処理機構の解明手法の開発と行動課題の開発をそれぞれ行う。 前年度は、対物レンズ下空間に挿入する、小型回転光学素子を開発し、0mmから6mmの任意距離離れた2カ所で同時に2光子カルシウムイメージングを可能とする方法論を新規に開発するとともに、内発性外発性レバー引き運動課題実行時のマウス運動野からの2光子カルシウムイメージングを実施し、課題関連細胞を同定した。 本年度は、小型回転光学素子にさらにピエゾ対物レンズマウントを組み合わせることで、2視野2層の計4視野イメージングへとさらに発展させた。また、これら系を組み合わせた実験を実施し、取得された神経活動の解析を進めることで、前肢関連運動野吻側部(RFA)が前肢関連運動野背側部(CFA)と比較し、内発性、外発性運動をより高精度にデコーディング可能なことを明らかとした。また、RFA及びCFAは機能的なネットワークを構成し、さらにそのネットワークの結合強度は個体状態依存的に変化することを明らかとした。これら結果は、課題状況依存的な脳領野間の動的なネットワークの再構成を示している。
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