研究代表者らは,ストレス環境下で蓄積するプリン分解代謝中間体アラントインの蓄積がストレスホルモン応答に影響を与えることを見出した。そこで,ルシフェラーゼレポーターアッセイにより,アラントインの受容に必要な因子の単離を行い,その作用機序の解明を目指した。しかし,スクリーニングを行えるほどのルシフェラーゼの発光強度が得られず,実験系の構築には至らなかった。 アラントインの作用機序を探索することが困難であったため,シロイヌナズナのプリン分解を窒素再利用機構の側面から調査した。プリン塩基の分解はその過程で4mol当量のアンモニウムイオンを放出するため,窒素リサイクル系の一つであるとされてきた。しかし,それを実験的に示した報告例はこれまでになかった。そこでプリン分解代謝の主要な代謝中間体であるウレイド(アラントインとアラントイン酸)の分解酵素を欠損した株の生育を調査した。その結果,早咲き,老化の促進,成長量・捻性の低下など,窒素欠乏条件下にある植物と酷似した表現型を示した。 上記の解析からプリン塩基の分解が効率的な窒素の利用に関わっている可能性が考えられたため,次にプリン塩基がソースからシンクへ輸送されている可能性を検証した。その結果,アラントイン酸が生育後期にシンクで強く蓄積することがわかり,転流窒素源として利用されている可能性が示された。そこで,ウレイド膜輸送体を欠損した株の生育を調査した結果,ウレイド分解系の変異と同様,開花の促進と生育後期における成長量の低下が観察された。更に,これら輸送系の変異株ではシンクにおけるアラントイン酸の蓄積が抑えられており,ソース・シンク輸送に支障が及んでいることが示唆された。以上の結果から,ウレイドの分解・輸送の機能喪失によりプリン由来の窒素が効率的に利用されなくなると,植物の成長に甚大な影響が生じることが考えられた。
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