研究課題/領域番号 |
14J05368
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
先崎 理之 北海道大学, 農学院, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | Surrogate species / Reproductive success / Play-back / N-mixture model / Wetland / Mobbing call / Conservation priority |
研究実績の概要 |
現存する生物多様性の将来における維持の保証は、我々に課された重大な課題の一つである。今日まで、投資と社会の関心を高める点から、アンブレラ種の保全は実践的な生物多様性保全の根幹を担ってきたが、この手法は対象生物群集が将来にわたっても維持されるかどうかは考慮してこなかった。本研究の目的は、アンブレラ種を利用して、湿地性鳥類群集の将来にわたる持続可能性が高い場所(繁殖成績の高い場所)を迅速かつ適切に保全する手法を開発することである。
研究計画の初年度であるH26年度は、北海道中央部の分断化された湿地パッチ全域において、H24年度から行っているアンブレラ種の猛禽類(チュウヒ)の繁殖成績モニタリングを引き続き行った。このデータを元に、チュウヒにとっての湿地パッチの質を評価した。さらに、チュウヒにとっての湿地パッチの質が様々な26のパッチで、他の湿地性鳥類の成鳥/巣立ち雛密度を、プレイバック法による複数回カウントを用いて調べた。
データの解析の結果、プレイバック法と個体の発見率を考慮する統計モデルの併用により、10種の成鳥、7種の幼鳥で個体数密度を推定することに成功した。また、チュウヒを利用して多種の繁殖成績を高い場所を保全出来るかどうかを明らかにするために、チュウヒにとってのパッチの質と湿地性鳥類の成鳥/巣立ち雛密度の関係を調べたところ、4種の成鳥個体数、5種の巣立ち雛個体数がチュウヒにとってのパッチの質と正に関係することが明らかになった。これらは、アンブレラ種にとって質の高い場所の保全が、湿地性鳥類群集全体の持続可能性が高い場所の保全につながることを示唆している。現在は、一連の成果をまとめた論文を国際誌に投稿中である。また、これらの成果は昨年度中に開催された国際鳥学会、日本生態学会にて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
複数の湿地性鳥類種の繁殖成功度を簡易的に測る手法を開発することに成功し、この手法を用いて得られたデータから、チュウヒの繁殖成績と他の鳥類群集の繁殖成績の関係を明らかにできたので。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は計画通りチュウヒの繁殖成績のモニタリングを継続し、他種の繁殖成績の調査地も拡大する。また、昨年度の調査を通して見えてきた新たな課題にも取り組む予定である。
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