研究実績の概要 |
①COX阻害薬はケラチノサイトのTSLP産生を増強する アトピー性皮膚炎におけるケラチノサイト胸腺間質性リンパ球新生因子(thymic stromal lymphopoietin, TSLP)の過剰産生メカニズムとして、kallikrein 5 (KLK5) が直接proteinase-activated receptor 2 (PAR2)を活性化し、核内因子κB(nuclear factor-kappa B, NF-κB) を介したTSLPの過剰発現が誘導されるという経路が知られる。申請者は、ハプテン反復塗布モデルの耳介皮膚のKLK5およびTSLPのmRNAをリアルタイムPCR法により定量した。KLK5の発現はインドメタシン投与によって増強されず、TSLP産生は有意に増強された。このことから、インドメタシンはKLK5産生には関与せず、PAR2以降の細胞内シグナルに関与する事が示唆された。 ②COX阻害薬によるTSLP産生増強はPGE2-EP2を介する 正常ヒト表皮角化細胞(Normal Human Epidermal Keratinocytes, NHEK)のTSLP産生を培養上清の酵素結合免疫吸着法(Enzyme-Linked ImmunoSorbent Assay, ELISA)にて定量した。ハプテン刺激でNHEKからのTSLP産生は増加、インドメタシンにより産生はさらに増強された。この実験系にプロスタグランジンE2(PGE2)の受容体である、EP受容体の各サブタイプ(EP1,EP2, EP3, EP4)のantagonistをさらに添加したところ、EP2 antagonistによってハプテン刺激によるTSLP産生は増強され、EP2 agonistによってインドメタシンによるTSLP産生増強作用はキャンセルされた。このことから、インドメタシンによるTSLP産生増強はPGE2-EP2を介していることが示唆された。
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