研究課題
本研究では、乳がん幹細胞のスフェア形成能や腫瘍形成能に寄与する分子として発見したMICAL3の機能性を明らかにすることを目的としている。採用第1年度目には、乳がん細胞においてMICAL3のmonooxygenaseドメイン がセマフォリンシグナル下流で働くCRMP2の二量体形成を介在し、スフェア形成を促進している可能性があることを明らかにしている。今年度は、まず、セマフォリンシグナルの受容体のひとつであるNeuropilin-1に着目し実験を行った。乳がん臨床検体由来の細胞を用いてNeuropilin-1が発現している細胞の特徴を調べた結果、Neuropilin-1発現細胞にのみ乳がん幹細胞のスフェアが形成されることを見出した。また、Neuropilin-1中和抗体を用いてシグナルを抑制するとスフェア形成能が低下することが明らかになった。次に、Neuropilin-1をレセプターとしたMICAL3-CRMP2二量体化シグナルががん幹細胞の細胞分裂の時に働くのではないかと推測し検討を行うことにした。臨床検体細胞由来NP1陽性細胞を低密度で播種し、1度細胞分裂した時に、CRMP2と結合し、かつ、未分化細胞で発現すると報告されているNumbの免疫染色を行った。その結果、セマフォリン刺激下においてNP1/Numb両陽性の細胞は対称性分裂を起こすこと、また、MICAL3の発現を抑制した細胞ではNP1/Numb両陰性の細胞に分裂する割合が高くなることがわかった。したがって、セマフォリン刺激下において、MICAL3を介したCRMP2の二量体化が引き起こされることによって、Numbが安定化され、NP1陽性乳がん幹細胞の対称性分裂を伴う腫瘍形成を引き起こすことが明らかになった。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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Cancer Research
巻: 76(4) ページ: 974-83
10.1158/0008-5472.CAN-15-2135