研究課題
本年度は、昨年度候補として挙がったmiR-663aを大腸癌細胞に導入する事で、その役割を明らかにしようと試みた。miR-663aの導入に関してはエレクトロポレーション法がドランスフェクション試薬よりも効率が良いことが昨年度の段階で分かっていたが、エレクトロポレーションによる細胞へのダメージが予想以上に大きく、その後の実験を行うことが難しいと判断し、レンチウイルスベクターによるmiR-663a過剰発現株を作成する方法に切り替えた。pLV-miRNA Vectorをパッケージングしたレンチウイルスベクターを大腸癌細胞に感染させたところ、多くの細胞で導入が観察された。その後、ピューロマイシンを用いて細胞の薬剤選択を行い、樹立した細胞のmiR-663a発現レベルをqRT-PCRにて確認したところ、導入前の細胞とコントロールベクターを導入した細胞に比べ、有意にmiR-663aの発現が高いことが分かった。miR-663aの細胞に及ぼす影響を確認したところ、この細胞は細胞質が肥大した老化様形態を示し、増殖が抑制されることが分かった。さらに、細胞周期を確認したところ、miR-663aを過剰に発現する大腸癌細胞では、G2/M期で停止している細胞が多く存在していることが明らかになり、細胞周期を調節する因子やアポトーシスに関与する因子の遺伝子の発現レベルも有意に高くなる事が分かった。次年度以降はmiR-663aの更に詳細な効果を検討するため、ターゲットとなるmRNAの解明や、マウスを用いたIn vivoでの役割、既存の抗がん剤との併用を含めたアプローチから検討を行う予定である。
2: おおむね順調に進展している
miRNA過剰発現細胞株の作成に関しては、トランスフェクション試薬やエレクトロポレーションを行った際にトラブルが生じる事が予想されたため、予めウイルスによる導入までを計画しており、おおむね予想通りの進展であった。さらにターゲットとしたmicroRNAの導入後、癌細胞の増殖は抑制されたため、このmicroRNAは抗菌ペプチドによって生じる癌細胞の成長抑制作用の一端を担っていると考えられたため。
当初の予定通りマウスを用いたin vivoにおける抗菌ペプチドの効果を今回のターゲットであるmicroRNA過剰発現細胞も用いて確認する予定である。さらにmicroRNAの標的シグナルを明らかにするため、参加ストレスやアポトーシスの経路に焦点を当て、明らかにしていきたいと思っている。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件)
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