研究実績の概要 |
本研究では、ナノマテリアルの物性-細胞内動態・オルガネラ移行能の連関情報を基盤として、オルガネラ、特に細胞核を標的とする細胞内DDSナノキャリアを創成し、細胞内DDSというべき薬物送達法の開発を目指している。当該年度は、昨年見出したナノサイズのシリカ粒子がサブミクロンサイズの粒子よりも細胞内で高い運動性を示すという知見を基に、さらなる粒子径と細胞内動態の連関解析を進めると共に、粒子径による運動性が異なるメカニズムの解明を図った。 具体的には、ナノサイズの粒子の中でも特定の粒子径が高い運動性を示す可能性に着目し、粒子径30,50,70,100 nmのシリカ粒子の細胞内における運動性を解析した。その結果、いずれの粒子径であっても拡散運動、能動運動などの指標において、ほとんど同様の運動性を示すことが明らかとなった。従って、細胞内における粒子の運動性はナノサイズとサブミクロンサイズの間に閾値がある可能性が示された。そこで、直径70, 300, 1000 nmのシリカ粒子(nSP70, nSP300, mSP1000)に関して、粒子の運動メカニズムの解明を試みた。その結果、mSP1000は微小管依存的な運動を示さないのに対し、nSP70、nSP300は微小管依存的な能動運動を示すこと、さらに、微小管依存的に運動するエンドソームの運動に着目したところ、局在するエンドソームの違いに関わらず、ナノサイズの粒子はサブミクロンサイズの粒子よりも早く運動することを見出した。 上記の解析結果から、ナノ粒子とサブミクロンサイズの粒子の細胞内運動は大きく異なることが示唆されると共に、その機構として細胞内での物質輸送機構に与える違いが重要である可能性が示された。今後は、サブミクロンサイズの粒子の運動性が低下するメカニズムを解析すると共に、これらの影響が細胞核への薬物送達効率に与える影響を評価する予定である。
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