研究課題
本研究課題では、活性酸素と一酸化窒素のシグナルを担う8-ニトロ-cGMPが活性イオウ分子種(ポリサルファ化合物)と反応することにより生成する新規環状ヌクレオチド8-SH-cGMP、およびこれに関連して我々が見出した新規タンパク質翻訳後修飾ポリ-S-グアニル化について、反応メカニズムの詳細とシグナル伝達機能を解明することを目的としている。これまでに8-SH-cGMPの生成動態および生成メカニズムを解明した。そのなかで、細胞内の多くのタンパク質がシステイン側鎖に過剰のイオウを含むこと(タンパク質ポリサルファ化)がわかり、8-ニトロ-cGMPがポリサルファ化タンパク質と反応することによってポリ-S-グアニル化が効率よくもたらされる可能性が見出されてきた。そこで本年度は、ポリサルファ化タンパク質を標的とした8-ニトロ-cGMPによるタンパク質ポリ-S-グアニル化に焦点をあて、この反応メカニズムについて解析した。まず、タンパク質ポリサルファ化を解析するために、システイン側鎖の修飾剤であるマレイミド誘導体とSDS-PAGEを組み合わせた特異的なポリサルファ化タンパク質の検出法を開発した。また、昨年度構築した安定同位体希釈法とLC-MS/MSによるポリサルファ化合物の解析技術を応用し、タンパク質のポリサルファ化を定量的に解析することに成功した。ポリサルファ化が確認されたヒトGAPDHの精製タンパク質および細胞ライセートを用いて、8-ニトロ-cGMPによるポリ-S-グアニル化の特異的な解析法を構築した。システイン残基を置換したヒトGAPDHの変異体について同様の解析を行ったところ、特定のポリサルファ化システイン残基がポリ-S-グアニル化の標的であることが示唆された。以上より、8-ニトロ-cGMPがポリサルファ化タンパク質の求核性の高いポリサルファ化システイン側鎖と直接反応し、タンパク質の可逆的修飾であるポリ-S-グアニル化がもたらされることが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通り、精製タンパク質および細胞ライセートを用いてポリ-S-グアニル化の特異的な検出法を構築した。また、目的のタンパク質についてポリサルファ化を特異的あるいは定量的に解析する方法を構築した。これにより、8-ニトロ-cGMPがポリサルファ化タンパク質に対して反応することでポリ-S-グアニル化がもたらされることが明らかとなった。以上より、順調に進展していると判断した。
ポリ-S-グアニル化が酵素活性などタンパク質の機能に与える影響を解析し、細胞機能への関わりを明らかにする。また、8-SH-cGMPによるポリ-S-グアニル化についてその反応メカニズムを解析する。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (5件) 備考 (1件)
Biochemistry
巻: 55 ページ: 751-761
10.1021/acs.biochem.5b00774
http://www.toxicosci.med.tohoku.ac.jp/index.html