研究課題
まず、成熟T細胞腫瘍の一つであるType II EATL および PCGD-TCL のマウスモデルの樹立を試みた。Type II EATLやPCGD-TCLは発症部位がそれぞれ腸管、皮膚に限局しており、normal counterpart の細胞のみならず腫瘍細胞も微小環境に依存的である可能性が考えられる。 Type II EATLやPCGD-TCL に対する腫瘍細胞-微小環境間の相互作用を治療ターゲットとした新たな治療戦略を開発すべく、当初の計画通り、Type II EATLやPCGD-TCL のマウスモデルの樹立を開始した。p53+/-マウスを用いる系は腫瘍に特異性のある遺伝子変異を導入する系ではなく、リンパ腫の安定した発症を導くのが困難である可能性が考えられ、新たな系の考案および立ち上げを行った。マウスモデルの樹立ができれば、当初の計画通り、微小環境を治療ターゲットとした治療の有効性に関する検討を進める。さらに、節性成熟T細胞腫瘍に対する強度減弱前処置を用いた同種造血幹細胞移植の成績を検討した。同種造血幹細胞移植は、節性成熟T細胞腫瘍を完治させることが可能な治療法として期待されているが、治療関連死亡が高率に起こることが問題である。近年、同種造血幹細胞移植の前処置を減弱することで、その治療関連死亡を減らす試みが世界中でされているが、その成績は明らかではない。今回我々は、日本造血細胞移植学会データベースを用いて、354症例の成績を検討した。通常強度前処置群と比較して、強度減弱前処置群では治療関連死亡率が有意に低下しているにも関わらず、生存曲線はプラトーに達していた。強度減弱前処置を用いた同種造血幹細胞移植は、安全な根治的治療選択肢になり得ると考えた。
2: おおむね順調に進展している
まず、 Type II EATLやPCGD-TCL に対する腫瘍細胞-微小環境間の相互作用を治療ターゲットとした新たな治療戦略を開発すべく、Type II EATLやPCGD-TCL のマウスモデルの樹立を開始することができた。また、成熟T細胞腫瘍に対する既存の治療法のうち、成績が明らかにされていない強度減弱前処置を用いた同種造血幹細胞移植の臨床成績を全国規模で解析することができた。いずれも当初の計画通りであり、おおむね順調に進展していると言える。
Type II EATL やPCGD-TCL のマウスモデルの樹立ができれば、当初の計画通り、微小環境を治療ターゲットとした治療の有効性に関する検討を進める予定である。微小環境特異的にリガンドを発現し、腫瘍特異的に受容体を発現する分子をスクリーニングし、リガンドのノックアウトマウスの解析を行うことで、腫瘍細胞—微小環境間の相互小をターゲットとした新たな治療戦略を考えていく。また、節性成熟T細胞腫瘍に対する強度減弱前処置を用いた同種造血幹細胞移植の成績に関しては、論文投稿を行う予定である。
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