研究課題/領域番号 |
14J05542
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
久野 洋 大阪大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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キーワード | 犬養毅 / 小西新右衛門 / 岡山県南 / 伊丹 / 進歩党 / 民力休養 / 対外硬 |
研究実績の概要 |
本年度は、継続的に史料調査を行うとともに、研究フィールドとする岡山県南地域と兵庫県伊丹地域の政治動向に関して、それぞれ犬養毅と小西新右衛門の動向に着目して検討を加えた論文を発表した。 (1)明治中後期の岡山県の政治状況、および犬養毅の選挙地盤の特質 1890年代の岡山県において進歩党系政党が勢力を拡大していく過程を、犬養毅の選挙地盤を中心に分析した論文を発表した。ここでは、当該期における進歩党系の地方基盤の特徴を明確化するとともに、政党勢力が地域社会に支持基盤を確保していく具体的ありようを提示した。さらに、地方政治史研究において消極主義=民力休養論の地域的な拡がりや展開に着目する必要性を論じた。 この論点をより具体化し、1900年以降の岡山県の政治状況を検討するための史料調査を行った。岡山県立図書館、岡山県立記録資料館、倉敷市総務課歴史資料整備室、犬養木堂記念館、津山郷土博物館、国立国会図書館などで、犬養毅の論説が掲載された雑誌・新聞や、彼と繋がりのある政治家の関係史料を収集した。その成果の一端は、明治末の犬養毅の選挙地盤の特徴を明らかにした論文として発表した。また、日露戦争前後の岡山県の政治状況に関して、日本史研究会近現代史部会などで口頭報告を行った。 (2)明治維新以降における伊丹地域の近代化過程の特質 神戸市立文書館、伊丹市立博物館、国立公文書館などで関西財界の政治家・実業家の関係史料を調査した。また小西酒造株式会社所蔵の新出史料群「小西家萬歳蔵資料」の合同調査に定期的に参加した。こうして収集した史料の分析結果は、鉄道敷設過程を中心に伊丹地域の近代化の特質を明かにした論文として発表することができた。本論文では、小西新右衛門を中心とする伊丹の在来資本と大阪資本・大阪財界との関係に注目し、伊丹地域の近代化過程を見る上で明治30年前後に画期を置くことができることを指摘した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、これまでの分析結果をまとまた成果を学術雑誌に発表することができた。またそこで得られた知見をもとに、精力的に史料調査を実施し、今後の課題をより明確化することができた。
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今後の研究の推進方策 |
収集した史料に関する先行研究・関連文献の博捜を心がけつつ、本年度に明らかにした明治中後期の岡山県の政治状況と、中央政界における犬養毅の政治的動向や対外硬運動との連関について検討する必要がある。その際、犬養毅の中央政界での動向や中国での活動、それを踏まえた岡山県における立憲国民党の成立過程が分析の焦点となる。 伊丹地域の政治的動向に関しては、本年度の成果を受けての次なる課題として、小西家と関西財界との政治的・経済的関係や、小西新右衛門と対外硬派の指導者である近衛篤麿との結びつきについて、具体的に明らかにすることがある。「小西家萬歳蔵資料」の中には、関西財界の実業家からの書簡・書類のみならず、松方正義、近衛篤麿、東久世通禧、籠手田安定といった政治家からの書簡も確認されている。これらの新出史料とともに、整理済みの「小西新右衛門氏文書」(伊丹市立博物館寄託)も活用し、上の課題に取り組んでいきたい。
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