研究課題
1. EPRAPの脳内炎症での機能を解明我々はEP4受容体新規結合分子EPRAPに着目した研究を行っており、マクロファージのEPRAPがEP4受容体を介して抗炎症に働くことを既に明らかにしている。中枢におけるEPRAPの局在や働きはこれまで全く解明されていなかったが、EPRAPがグリア細胞に存在し炎症促進に働くことを近年明らかにした。このメカニズムを解明していくことで中枢性炎症疾患の病態解明、治療法確立につながると考え研究し、以下の点を明らかにした。(1) in vivoモデルでEPRAPが脳内炎症を促進することを明らかにした。(2) 初代ミクログリア細胞を用い、EPRAPの炎症促進作用にはEP4受容体の関与が少ない可能性を明らかにした。(3) ミクログリアでのEPRAPの炎症促進作用にはJNK経路が関わる可能性を明らかにした。4) EPRAPsi-RNAを導入したマウスミクログリア株化細胞BV-2を用いて、EPRAPがミクログリアで炎症を促進することを確認した。2. アルツハイマー病 (AD) の病態生理におけるEPRAPの意義を解明(初期検討)認知症の中でもADは50%以上と最多を占めており、その治療には原因物質であるβ-amyloid (Aβ) をターゲットとした治療薬が必要である。先行研究から、EP4受容体シグナルはAβ産生に関わることが明らかとなっており、我々はEPRAPがAβ産生のみならず、ADを悪化させる脳内炎症の両者を抑える新たな治療ターゲットとなる可能性があると考え、以下の検討を行った。(1) EPRAP欠損マウスとJ20マウスとの交配によるcompound mutantマウスを作製した。(2) 行動評価の初期検討で、EPRAP欠損マウスが精神疾患様症状を示すことを明らかにした。本研究は、根本的治療薬が存在しないADの研究に大きく貢献することが予想される。
1: 当初の計画以上に進展している
研究に積極的に取り組み、研究成果は期待以上のものが得られた。まずミクログリアでのEPRAPの役割をin vivo及びin vitroで解明した。当初の予想とは逆の、マクロファージとミクログリアでEPRAPの機能が異なるという実験結果に対しても真摯に向き合い、その違いが生まれるメカニズムの解明に取り組んでいる。また学部時の研究バックグラウンドを生かし、行動実験を予定通りに実行した。来年度より行う、EPRAPがアルツハイマー病の新規治療標的となり得るか、アミロイドベータ産生及び炎症の両側面からの検討のために十分な初期検討がなされている。本研究は、患者が急増しているにも関わらず根本的治療薬が存在しないADの研究に、大きく貢献することが予想される。さらに得られた結果を取りまとめ、国内学会で2回、国際学会で1回、学会発表を行った。第88回薬理学会年会では英語の口頭発表を行い、優秀発表賞を受賞した。
1. EPRAPの脳内炎症での機能を解明EPRAPsi-RNAを導入したマウスミクログリア株化細胞BV-2ではLPS刺激後の炎症性サイトカイン産生量が減少していた。初代ミクログリア細胞と同様の結果が得られたため、今後は細胞数が安定して得られるBV-2を用いてミクログリアでのEPRAPの炎症促進作用メカニズムを更に追及していく。EPRAPはアンキリンリピートと呼ばれる蛋白間結合に関係する領域を含んでいるため、EPRAPの結合蛋白を探索中である。2. アルツハイマー病 (AD) の病態生理におけるEPRAPの意義を解明ADに対するEPRAPの機能を探る為、J20+/- EPRAP-/- compound mutantマウスを作製した。J20マウスは、ニューロン特異的にヒト変異型Aβ前駆蛋白を過剰に発現し、5-6ヵ月齢から脳実質へのAβ蓄積と認知機能低下を認めるADモデルマウスである。今後はこのcompound mutantマウスの行動解析を行い、EPRAPとADとの関係を探る。
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Journal of Arherosclerosis and Thrombosis
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http://doi.org/10.5551/jat.29074