研究実績の概要 |
2-(3-フェニルプロピノイル)フェノールに対しLewis塩基触媒を用いた位置選択的5-exo環化反応によるオーロン誘導体の新規合成法を検討した. 2-(3-フェニルプロピノイル)フェノールからオーロン誘導体を合成する場合, 塩基性条件では望む5-exo環化と同時に6-endo環化が進行し, フラボン誘導体との混合物となることが問題であった. この位置選択性の問題を解決するため2-(3-フェニルプロピノイル)フェノールに対し, 様々なLewis塩基を用いて検討したところ, EtOH溶媒中2.5mol%のPBu3を用いることで温和な条件下速やかに反応が進行し, 高収率かつ高選択的に5-exo環化体であるオーロン誘導体を得られることを見い出した. さらに基質適応範囲についても検討し, ベンゼン環上に電子供与性基および電子求引性基を導入した基質を用いても速やかに反応は進行し, 高収率かつ高選択的に対応するオーロン誘導体が合成できることが分かった. また重溶媒を用いた反応機構の解析から反応中間体としてイリドの生成が考えられ, 本反応が2-(3-フェニルプロピノイル)フェノールに対するLewis塩基の付加から始まることを明らかにした. 以上により, 適切なLewis塩基触媒を選択することで2-(3-フェニルプロピノイル)フェノールの6-endo環化および5-exo環化をそれぞれ選択的に進行させることができることを見い出し, 対応するフラボン誘導体およびオーロン誘導体の高収率かつ高選択的な合成法の開発に成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目標である2-(3-フェニルプロピノイル)フェノールの位置選択的環化反応の開発について, ホスフィン系のLewis塩基を用いることで5-exo環化の選択性が向上することを見い出し, 特にEtOH溶媒中PBu3をLewis塩基触媒として用いることで高選択的かつ高収率でオーロン誘導体を得られることを明らかにした. また電子供与性基や電子求引性基をもつ基質を用いた場合でも対応するオーロン誘導体に変換することができることを見い出し, 様々なオーロン骨格を有する化合物の合成へ展開可能であることを示した.
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今後の研究の推進方策 |
本年度の結果からLewis塩基触媒が2-(3-フェニルプロピノイル)フェノールに対して1,4-付加することで反応活性種が系中で生成することで, 位置選択的環化反応が進行することが明らかになった. 基質のフェノール性水酸基をアミノ基とすることで, 医薬品等で多くみられているキノロン骨格を構築できることが考えられる. そこで本反応の適応範囲を広げるべく, 2-(3-フェニルプロピノイル)アニリンを基質として用いたキノロン骨格の構築を目指すとともに, 本反応を利用した天然物の合成を検討する.
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