研究課題
本研究は、蛍光性ヌクレオチドの結合と解離、それに伴ったタンパク質の構造変化を可視化するための、高速AFM / 蛍光顕微鏡複合機を用いた実験システムの開発が目的である。1.カンチレバー探針への金属ナノ粒子固定法の確立。表面プラズモン共鳴を用いて、AFM観察範囲の蛍光を増強する手法の開発を行った。カンチレバー探針近傍にプラズモン共鳴を発生させるため、カンチレバーへの金属ナノ粒子の固定法を検討した。金属ナノ粒子をカンチレバーでピックアップするために、現有の光学顕微鏡システムに対物レンズ型の暗視野顕微鏡を組み込んだ。金属ナノ粒子は可視域にプラズモン共鳴波長があり、散乱効率の高い直径80 nmの金コロイドを使用した。カンチレバー探針は電子顕微鏡を用いて、フェノールガス雰囲気下で電子線照射することで作成した。この手法で作成したカンチレバー探針は金コロイドと強く相互作用することがわかり、暗視野顕微鏡を用いて任意の金コロイドをカンチレバーの位置へ移動し、カンチレバーを走査することで探針先端に金コロイド粒子を容易に取り付けられることがわかった。金コロイドを接着したカンチレバーを用いて蛍光ビーズを高速AFM / 蛍光顕微鏡同時観察を行った結果、カンチレバーがない時と比べて約2倍程度の蛍光の増強を確認することができた。2.チップ走査型高速AFMスキャナーへのカンチレバー固定法の開発。カンチレバー支持具をZピエゾ上に装着せず、スキャナーベース部に設けカンチレバーを固定する手法の開発を行った。この新しい固定法では複雑な治具をZピエゾ上に装着することなくカンチレバーを強固に固定することができ、Zピエゾへの質量効果を低減することができる。この時のZスキャナーの共振周波数は100 kHzであり、Zピエゾのみをスキャナーベースへ固定した時と同等の値を実現することができた。
2: おおむね順調に進展している
カンチレバー探針への金属ナノ粒子の固定法を確立し、蛍光ビーズを標準試料として蛍光の増強を確認することができた。これにより、比較的高濃度の試料を用いても蛍光像とAFM像を関連付けすることができる一分子高速AFM/蛍光顕微鏡相関法を確立した。また、スキャナーへの新たなカンチレバー固定法の開発に成功し、チップ走査型高速AFMの利便性を向上させ、実用化へ向けた最大の課題を解決することができた。
前年度に確立した一分子高速AFM/蛍光顕微鏡相関法を用いて、蛍光性ATPと回転子を取り除いたF1-ATPase(α3β3複合体)の高速AFM/蛍光顕微鏡同時観察を行う。得られた観察結果からヌクレオチドの結合/解離とβサブユニットの構造変化のタイミングやヌクレオチドの結合数について解析する。また、探針近傍の近接場光を応用して、AFM探針の各ピクセル位置と同期してフォトンカウンティングを行い、超解像光学顕微鏡と高速AFMの複合化を行う。
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Journal of Biological Chemistry
巻: 289 (29) ページ: 14056 14065
10.1074/jbc.M113.546085