前年度に開発した高速AFM / 蛍光顕微鏡画像相関法を用いてγサブユニットを取り除いたF1-ATPase(α3β3複合体)の構造変化と蛍光ATPの同時観察を行った。しかし、高速AFMと蛍光顕微鏡の空間分解能の違いから、ヌクレオチドの結合/解離とそれに伴ったβサブユニットの構造変化を明確に捉えることができず、詳細な化学/力学変換メカニズムを議論することができなかった。そこで、光の回折限界を超える空間分解能を有する走査型近接場光顕微鏡と高速AFMを組み合わせた高速AFM / 超解像光学顕微鏡複合機の開発を行った。 アバランシェフォトダイオードを使い、蛍光を計測し光学像を構築した。Igor Pro(Wave Metrics)とC言語を用いて探針の位置と同期して蛍光を検出しAFM像と光学像を同時に取得することができるイメージングソフトウェアを開発した。探針の金属修飾法は、アミンの光還元反応を利用して探針を銀ナノ粒子でコーティングした。この手法で作製した探針では、銀で薄膜コーティングした探針と比べて約6倍の散乱光強度を達成することができた。直径40 nmの蛍光ビーズを高速AFM/光学同時イメージングした結果、イメージングレート3.5秒で光の回折限界を大きく上回る87 nmの超解像光学イメージングに成功した。このイメージングスピードは、報告されている走査型近接場光顕微鏡を用いた結果と比べて100倍以上速いスピードである。しかしながら、銀粒子が探針の先端全体を覆っているため、AFMの空間分解能が大きく低下してしまった。このことが、大きな電場増強を達成しているにもかかわらず光学像において、空間分解能が制限されている要因だと考えられる。今後は、探針に銀粒子をコーティングした後に、短い探針を製作するなどの探針作製法を改良していく予定である。
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