研究課題
これまで,放牧草地の生産性の向上と環境負荷低減を総合的に達成するための精密放牧システムの構築の研究を行ってきた。精密放牧システムとは草地の草資源や土壌養分の偏りなど複雑でばらつきのあるデータを定期的に把握し,その情報をもとにきめ細やかな管理を行うことで持続的利用可能な放牧を目指すものである。その中でも,広島大学とニュージーランドおよび北海道農業研究センターとの共同研究において,私は主に家畜行動の監視技術の開発と空間情報の統合・解析に取り組んできた。放牧地では,家畜の糞は土壌への栄養供給源であり,温室効果ガス放出源でもあるため,放牧地内の面的な分布を最適化し全体の「生産性向上」と「環境負荷低減」を両立するためには,採食や反芻だけでなく,排泄行動も把握する必要がある。放牧家畜の行動を把握するための機器が多く開発されている中,排糞行動についての有益なツールはまだ開発されていない。そこで,研究計画に従い,当該年度はまだ成果が得られていない糞排出場所の把握のためのモデルの改良と,無人飛行機(UAV)を用いた放牧地の糞排出場所の検出を試みた。放牧(4日間)後にパドックを10 mグリッドに区切り,目視で数えた糞の数を目的変数とし,草地管理に応用可能な2つのパラメーター(草量と水飲み場からの距離)を説明変数としたシンプルなベイズモデルを作成した。草量は,リモートセンシングにより把握でき,水飲み場は人為的に移動可能である。また,糞が多い所と少ない所で偏りがあると考え,ランダム効果として,空間相関を考慮する条件付き自己回帰モデルを組み込んだ。その結果,高い推定精度(R2 = 0.93)が認められ,糞の空間分布の予測が可能であることが示唆された。今年度はモデルの再現性を明らかにする目的で,同時期の3パドックのデータを用いて,モデルの一般化とパドック間の比較を行った。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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Agriculture, Ecosystems and Environment
巻: 220 ページ: 135-141
10.1016/j.agee.2015.12.025