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2014 年度 実績報告書

がん由来エクソソームによる血液脳関門の破壊メカニズムの解明と診断治療への応用

研究課題

研究課題/領域番号 14J05687
研究機関東京大学

研究代表者

富永 直臣  東京大学, 医学系研究科, 特別研究員(DC2)

研究期間 (年度) 2014-04-25 – 2016-03-31
キーワード脳転移 / 乳がん / エクソソーム / 血液脳関門
研究実績の概要

申請者は、MDA-MB231-D3H2-LN(高転移株)を7週齢のscid/scidマウスへ移植し、脳転移モデルを作製した。こ今回、脳血管を構成する内皮細胞・ペリサイト・アストロサイトの三種の細胞を用いた、脳血液関門(BBB)を再現したin vitro modelによりエクソソームの作用解析を行った。
今回我々は、上述のモデルを用いて、がん細胞が分泌するエクソソームによる脳転移機構を明らかにした。その結果、脳転移細胞株のエクソソームは、BBBを構成する密着結合及び接着結合の細胞膜局在を変化させることが明らかとなった。網羅的解析の結果、候補であるmiR-181cをBBB in vitroモデルに形質導入するとエクソソーム同様にBBBを破壊した。また、miR-181cは細胞内で、PDPK1と呼ばれるキナーゼを標的とし、PDPK1の下流にあるアクチン線維構造を破壊するコフィリンを活性化することが明らかとなった。さらに、脳転移細胞株分泌EVsは、脳に集積し血管の透過性を促進し且つ脳転移を促進することをマウスモデルで明らかにした。これらの事実から、エクソソームに含まれるmiR-181cは血管内皮細胞のPDPK1を抑制しコフィリンを活性化することで、アクチンダイナミクスを変化させた結果、BBB破壊を引き起こし、乳がんの脳転移に寄与していると考えられる。さらに、乳がん脳転移患者の血清中では、miR-181cの存在量が増加しており、早期診断マーカーとして応用できる可能性がある。これらの結果はNature Communications(DOI: 10.1038/ncomms7716)に受理されている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

本研究は、乳がんの脳転移メカニズムを明らかにするとともに、早期診断への応用を目指す研究である。申請者は、エクソソームによる新規の脳転移メカニズムを明らかにし、Nature Communications(DOI: 10.1038/ncomms7716)に受理されている。さらに、包括同意の取れた乳がん患者血清で検討し、早期診断マーカーの可能性をも示唆している。このことから、当初の計画よりも進展していると言える。

今後の研究の推進方策

エクソソームによる脳転移促進メカニズムが明らかになり、さらに申請者の観察により、エクソソームに脳血管に集積する指向性が存在することが明らかとなった。しかし、指向性を決める要因については不明なままである。これまで、行ったプロテオーム解析により、すでにその候補分子が決定している。そこで、エクソソームの脳血管指向性についてさらに検討を進め、脳転移メカニズムの理解を深めたい。
加えて、早期診断マーカーとしての可能性についても、さらに多くの患者血清を用いて検討して行く必要がある。

  • 研究成果

    (13件)

すべて 2015 2014 その他

すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件) 図書 (2件) 備考 (3件)

  • [雑誌論文] Brain metastatic cancer cells release microRNA-181c-containing extracellular vesicles capable of destructing blood-brain barrier.2015

    • 著者名/発表者名
      Tominaga N, Kosaka N, Ono M, Katsuda T, Yoshioka Y, Tamura K, Lötvall J, Nakagama H, Ochiya T.
    • 雑誌名

      Nature Communications

      巻: 6 ページ: 6716

    • DOI

      10.1038/ncomms7716.

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著 / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Micromanaging of tumor metastasis by extracellular vesicles.2015

    • 著者名/発表者名
      Tominaga N, Katsuda T, Ochiya T.
    • 雑誌名

      Semin Cell Dev Biol.

      巻: S1084-9521(15) ページ: 00043-9.

    • DOI

      10.1016/j.semcdb.2015.02.016.

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] RPN2-mediated glycosylation of tetraspanin CD63 regulates breast cancer cell malignancy2014

    • 著者名/発表者名
      Tominaga N., Hagiwara K., Kosaka N., Honma K., Nakagama H., and Ochiya T.
    • 雑誌名

      Morecular Cancer

      巻: 13(1) ページ: 134

    • DOI

      10.1186/1476-4598-13-134.

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Exosomes from bone marrow mesenchymal stem cells contain a microRNA that promotes dormancy in metastatic breast cancer cells.2014

    • 著者名/発表者名
      Ono M., Kosaka N., Tominaga N., Yoshioka Y., Takeshita F., Takahashi RU., Yoshida M., Tsuda H., Tamura K., and Ochiya T.
    • 雑誌名

      Science Signaling

      巻: 7(332) ページ: ra63

    • DOI

      10.1126/scisignal.2005231.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Cancer-derived exosomes promote brain metastasis by disrupting blood-brain barrier through to change actin dynamics.2015

    • 著者名/発表者名
      Tominaga N., Kosaka N., Ono M., Nakagama H. and Ochiya T.
    • 学会等名
      74th Japanese Cancer Association
    • 発表場所
      Yokohama
    • 年月日
      2015-10-08 – 2015-10-10
    • 招待講演
  • [学会発表] Cancer-derived extracellular vesicles promote brain metastasis by disrupting blood-brain barrier through to change actin dynamics.2014

    • 著者名/発表者名
      Tominaga N., Kosaka N., Ono M., Nakagama H. and Ochiya T.
    • 学会等名
      Cold Spring Harbor Laboratory Meeting (Blood Brain Barrier)
    • 発表場所
      New York (Cold Spring Harbor)
    • 年月日
      2014-12-10 – 2014-12-13
  • [学会発表] Cancer-derived exosomes breakdown the blood-brain barrier by modulating actin dynamics and promote brain metastasis2014

    • 著者名/発表者名
      Tominaga N., Kosaka N., Ono M., Nakagama H. and Ochiya T.
    • 学会等名
      72th Japanese Cancer Association
    • 発表場所
      yokohama
    • 年月日
      2014-10-03 – 2014-10-05
  • [学会発表] Breast cancer-derived extracellular vesicles promote brain metastasis via break down BBB in vivo2014

    • 著者名/発表者名
      Tominaga N., Kosaka N., Ono M., Nakagama H. and Ochiya T.
    • 学会等名
      6th Japanese Association for RNAi
    • 発表場所
      Hiroshima
    • 年月日
      2014-08-28 – 2014-08-30
  • [図書] 血管医学2015

    • 著者名/発表者名
      Tominaga N. and OchiyaT.
    • 総ページ数
      不明
    • 出版者
      メディカルレビュー社
  • [図書] 週刊医学のあゆみ第一土曜特集、2014

    • 著者名/発表者名
      Tominaga N. and Ochiya T.
    • 総ページ数
      不明
    • 出版者
      医歯薬出版株式会社
  • [備考] 乳がんの脳転移メカニズムにエクソソームが関与 脳転移の早期診断への応用に期待

    • URL

      http://www.ncc.go.jp/jp/information/press_release_20150402.html

  • [備考] 「脳への転移 特殊な物質が脳血管破壊で発生」

    • URL

      NHK news web

  • [備考] 国立がん研究センター 分子細胞治療研究分野

    • URL

      http://mcm.ncc.go.jp/index.html

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公開日: 2016-06-01  

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