研究課題
糖尿病性足潰瘍を引き起こす胼胝は、局所に過剰な機械的応力が繰り返し加わることで発症する。それゆえに、胼胝を保有する患者においては、胼胝部を適切に免荷し、潰瘍化を予防することが重要である。局所の機会的応力として圧力とせん断応力が考えられるが、靴の中の特定の部位のせん断応力を測定することは今まで技術的に難しかった。また、胼胝部位にかかる高い圧力とせん断応力を改善するためにはどのような身体の動きと関連しているかを明らかにする必要がある。そこで、歩行中の下肢の動きと靴の中の胼胝部位の圧力とせん断応力を同時測定する測定システムを開発し、測定システムの信頼性と妥当性の確認を行った。本年度は臨床での調査を行うための土台作りを行った。まず、臨床経験を活かし、臨床現場で患者に対し安全に使用できるという基準で使用するセンサの選択から行った。実際にセンサを使用し、通常の使用方法では壊れやすいという問題やサイズの問題があることがわかったが、臨床現場で使用できるセンサであることを重視してこのセンサの問題点解決に取り組み、歩行中の下肢の動きと靴の中の胼胝部位の圧力とせん断応力の測定方法を確立した。更に、その測定システムの信頼性と妥当性を検証し、臨床で使用できることを示した。信頼性の検証では、10名の非糖尿病者で測定データの一貫性と、センサを装着し直すことによる測定データの安定性を確認した。妥当性の検証では、12名の非糖尿病者で圧力とせん断応力が高く測定されると考えられる状況と通常の状況との比較を行い、測定データの妥当性を確認した。測定システムを使用し、非糖尿病者10名において、下肢の動きとせん断応力との関係が確認出来てきている。今まで測定出来なかった臨床で患者自身の靴の中で胼胝部位にかかるせん断応力を測定できるようになり、今後糖尿病性足潰瘍予防のための新規性の高い知見が得られると考えられる。
2: おおむね順調に進展している
糖尿病性足潰瘍予防に向けた工学的手法に基づく歩容改善法の確立を目指しており、歩容改善法の根拠となるデータを測定するためのシステム作りができたため。また、非糖尿病者ではあるが、高いせん断応力を改善するためにどのような歩容改善をすべきか、その関連が検討出来てきているため。
4月よりこの測定システムを使用し臨床で糖尿病患者を対象に調査を開始している。歩容改善法の検討に加え、胼胝の有無による圧力・せん断応力の検討も行っていく予定である。工学的手法により行われる臨床での調査により、糖尿病性足潰瘍予防のための新規性の高い知見が得られると考えられる。
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