本年度は昨年度の成果を受けて、主に国際学会発表と追加解析・論文執筆に専念した。 昨年度までに、ブタクサの実験集団の栽培とマイクロサテライトマーカーを用いた父性解析により、(1)草丈は花粉散布距離を増加させること、(2)草丈と花粉生産量の両方が同程度に稔実種子数(オス適応度指標)を増加させる傾向にあること、(3)草丈は種子生産数(メス適応度指標)に有意な影響を与えないことを明らかにしていた。私は、これら(1)~(3)の結果について英語でまとめた内容を、6月にアメリカで開催されたEvolution Meetings 2016にて発表した(ポスター発表)。しかしこの解析では、実験集団内で自殖が起きていないことを前提にしていた。これは近年のブタクサの先行研究において高い他殖率が認められていたためであるが、古い文献では部分的な自殖も起こしているという記述もあり、自殖が生じている可能性を否定できなかった。そこで本年度は、他殖だけでなく部分的な自殖も考慮に入れた解析により、草丈と花粉生産量の効果の重要性について再評価した。新たな解析結果は他殖のみを考慮した時と同じ傾向を示した。 上記のように風媒花では草丈がオス繁殖成功の増加に貢献するため、草丈が高いほどオス投資量が多いことが報告されている。しかし、主茎が損傷して伸長できなくなった場合にオス投資量がどうなるのかについては議論されてこなかった。この疑問を解決するために行った昨年度までの茎頂切除実験と野外調査では、主茎を損傷したブタクサが 側枝の伸長を促進させて草丈を増加させ、損傷がない株と同等のオス投資を行うことをを明らかにしていた。本年度は、これらの結果を投稿可能な形に整理し、ほぼ論文用の原稿を完成させた。また、これらの整理した内容を第64回日本生態学会において発表した(ポスター)。
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