研究課題
ニワトリのヒナ500個体分の腺胃と腸を材料とし、新規抽出法を用いて長鎖で疎水性の高いペプチドを抽出した。その抽出物を逆相カートリッジカラムにかけて粗精製し、さらに高速液体クロマトグラフィーで分画した。各フラクションをキンギョの食道やニワトリの腸に添加し、平滑筋収縮あるいは弛緩活性が見られるものを選別した。分画と腸管アッセイを繰り返し、生理活性ペプチドを純化した。その後、分子量やアミノ酸配列の解析を行った。結果として新規生理活性ペプチドの同定には至らなかったが、いくつか興味深い活性物質の存在を見出したのでその一例を述べる。腺胃抽出物の分画サンプルの一部のフラクションに、キンギョの食道に対する収縮促進作用が認められた。そのフラクションについて逆相高速液体クロマトグラフィーによりシングルピークまで精製を進めたところ、アセトニトリル約80%で溶出され、非常に疎水性の高い物質であることがわかった。しかし、エレクトロスプレーイオン化質量分析においてペプチド性の多価イオンは検出されなかった。さらに、トリプシン消化を行っても活性は消失しなかった。これらの結果から活性の正体として、「トリプシン消化サイトであるLysやArgを含まないペプチド」もしくは「非ペプチド性物質」である可能性が示唆された。他にも多くのペプチドを抽出することができたが、構造を決定できたものは一部であり、それらは概ね既知のペプチド及びタンパク質であった。しかしながら、期待通り、分子量5000を超える高分子ペプチドや分子量500程度の非ペプチド性物質と考えられるものが多かった。
2: おおむね順調に進展している
採用以前は数十羽分の組織を用いて小スケールで予備実験を行ってきたが、本年度の研究で500羽と大幅にスケールアップすることができた。サンプル量が増えたことにより、抽出、精製、活性評価だけでなく、構造解析の条件検討も綿密に行うことができた。また、定法で主として得られる短鎖で親水性のペプチドとは異なるものが狙い通りとれていることが確かめられた。
来年度は抽出組織を変え、本年度に最適化したプロトコールに沿って新規生理活性ペプチドの同定を試みる。同定後は、新規ペプチドの各種組織におけるmRNAの発現量及び発現細胞分布を解析する。さらに、合成物を腸管に添加し、活性発現の閾値や50%効果濃度を算出する。
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