研究課題
これまでの文化心理学研究の多くは、特定の一時点における複数の文化のデータを収集し、人間の心理・行動傾向の文化差を記述することに留まっており、文化の動的な側面はほとんど扱われてこなかった。人間がいかに社会・文化を作り上げ、その社会・文化から影響を受けているのか、という文化心理学・社会心理学が共通して解くべき重要な課題を解明するためには、文化の動的な側面を経時的な実証データとして切りだすことが効果的である。文化変容のうち、文化の個人主義化に焦点を当てた研究は、少数ながら欧米において蓄積され始めていたが、欧米以外の文化変容についてはほとんど検討されていなかった。昨年度の研究から、日本において2004年から2013年までの子どもの名前が個性的になっていることが示された。しかし、検討された期間が10年と比較的短期間であった。そこで研究1では、地方自治体によって公刊されている広報誌に掲載されている名前を収集し、その変化を分析した。その結果、1984年から現在まで、複数の地方自治体において一貫して、個性的な名前の割合が経時的に増加していた。よって、より長期間の変化においても日本における個性追求傾向が増加していることが示された。さらに研究2では、個性追求傾向に限定されず、個人主義化が進んでいるかどうかを検討するため、新聞において個人主義的な価値観を反映していると考えられる単語の相対的頻度の変化を分析した。その結果、1874年から2015年において個人主義的な単語がより多く使用されていることが示された。加えて、こうした個人主義化が不適応と関連しているかどうかを検討するため、日本における自尊感情の経時的変化について検討を行った。複数の時系列調査を二次分析したところ、1990年代から現在まで、幅広い年齢層において一貫して、性別を問わず自尊感情は経時的に低下していた。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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Letters on Evolutionary Behavioral Science
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Frontiers in Psychology
巻: 6 ページ: 1-14
10.3389/fpsyg.2015.01490
人間環境学研究
巻: 13 ページ: 177-183
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