研究課題/領域番号 |
14J05847
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
野澤 敦子 京都大学, 医学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | オートファジートファジー / Rab GTPase / Rab35 / NDP52 / A群レンサ球菌 |
研究実績の概要 |
当該年度は、A群レンサ球菌(Group A streptococcus, GAS)をモデルとして用い、膜輸送制御に関わるタンパク質群である低分子量Gタンパク質であるRab GTPaseおよびにその負の調節因子として働くTBC/RabGAPに着目することで、選択的オートファジーの制御機構を明らかにすることを目的に解析を行った。 採用1年目にA群レンサ球菌感染細胞においてオートファジーのアダプタータンパク質であるNDP52がRab35によって制御を受けていることが明らかになったことから、採用2年目の前年度においてはミトコンドリアの分解に関わるマイトファジー、細胞内で異常に蓄積したタンパク質の凝集体の除去に関与するアグリファジー、非選択的オートファジーである栄養飢餓誘導時のオートファジー等の制御にもRab35がNDP52の制御に関与する可能性が示唆されたため、その検証を行った。その結果、マイトファジーおよび、アグリファジー、栄養飢餓誘導時のオートファジー等の制御にもRab35およびNDP52が関与していることが明らかにした。具体的には、CRISPR/Casシステムを用いたゲノム編集法によりHaLa細胞のRab35およびNDP52ノックアウト細胞を作製してマイトファジーおよび、アグリファジー、栄養飢餓誘導時のオートファジーを誘導することによってRab35の機能を明らかにした。 今回の結果は、免疫機構として働く細菌感染時のオートファジーだけでなく、より広義なオートファジーの制御機構の一端を明らかにしたことから、学術的観点だけでなく臨床応用に向けたオートファジー制御の観点からも非常に重要な知見であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は、A群レンサ球菌感染時のオートファジー制御に限らず、ミトコンドリアの分解に関わるマイトファジー、細胞内で異常に蓄積したタンパク質の凝集体の除去に関与するアグリファジー、非選択的オートファジーである栄養飢餓誘導時のオートファジー等の制御にもRab35およびNDP52が関与していることが明らかになり、学術的意義の大きな知見であると考えられる。 当初は、来年度に同定されたRabタンパク質のエフェクタータンパク質のスクリーニングを行う予定であったが、Rab35のエフェクタータンパク質としてNDP52が同定できている。また、この研究に関しては学会発表を行い、現在、論文投稿中である。ことからも当初の計画以上に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、新たにRab GTPaseの負の調節因子として働くTBC/RabGAPの一つであるTBC1D18について詳細な解析を行う予定である。上記に記した研究結果とは別に、これまでに、TBC1D18はそのGAP活性依存的にA群レンサ球菌感染時のオートファゴソーム形成を著しく抑制することが明らかになっている。このことから、TBC1D18に焦点を当て、A群レンサ球菌の細胞間移動を含めた細胞内動態の解明を目指す。具体的には既に構築済みであるTBC1D18強発現細胞およびにノックアウト細胞を用いてその詳細な機能解析に着手する予定である。 また、細胞間移動経路に関しても解析に着手する。まず、リアルタイムイメージングを用いてA群レンサ球菌が感染細胞間を移動しうることを観察する。次に、菌の細胞間移動に関与するRabの同定を行う。これには既に構築済みである60種のRabタンパク質のEmGFP(緑色蛍光タンパク質)融合体を用いて細胞間移動時に機能しているRabの同定を行う。さらに、ゲノム編集法であるCRISPR/Casシステムを用い培養細胞におけるノックアウト細胞を作製し、同定したRabが細胞間移動のどの過程で機能しているのかといった機能解析を行う。
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