研究課題
昨年度作出した人工吸血系を用いた新規のマダニ-バベシア実験感染モデルにより、バベシア原虫がマダニ飽血後24時間以内にマダニ中腸内において、マダニ体内ステージへのステージシフトを起こしている可能性が強く示唆された。そこで実際にバベシア原虫のマダニ体内へのステージシフトを誘導することを試みた。人工飽血させたフタトゲチマダニ成ダニの中腸内容物を、in vitro培養系B. ovata感染赤血球に添加した後、静置培養を行い、ギムザ染色による原虫の形態観察を行った。その結果、通常のin vitro培養系と異なる形態の原虫が観察され、その形態変化は12時間以内に完了することが分かった。また、原虫細胞骨格蛋白質P29を標的とした間接蛍光抗体法で確認したところ、それらの多様な形態はすべてバベシア原虫そのものであった。以上の結果より、バベシア原虫はマダニ中腸内において飽血後24時間以内にステージシフトを起こしていることを明らかにした。ここで確立した実験感染モデルを用いて、実際に同定したフタトゲチマダニC型レクチン(HlCLec)とB. ovataの関連性の検証を行った。HlCLec遺伝子をノックダウンしたマダニ(KD群)にB. ovataを人工感染させ、B. ovata β-tubulin遺伝子を標的としたPCR評価系によりバベシア原虫のマダニ体内動態の変化について観察した。その結果、KD群においては、飽血後4日目においてもマダニ中腸内にB. ovata原虫遺伝子が検出されたが、その他の臓器では検出されなかった。従って、HlClecはマダニ中腸内におけるB. ovata原虫の伝播機構に関与している可能性が示唆された。これらの研究成果は、マダニベクター研究の発展に寄与するものであり、同定した膜受容体とともに新規のバベシア原虫伝播阻止ワクチンの開発へつながる重要な知見であると考えられる。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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