研究課題/領域番号 |
14J05921
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
丹波 俊輔 大阪大学, 産業科学研究所, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | ピリジン / 重合反応 / テトラゾロピリジン / 有機半導体 |
研究実績の概要 |
本研究では,ピリジンのアクセプター性に注目しこれまであまり例のなかった,ピリジンを主骨格に持つn型半導体材料の創製を目標に合成に着手した。ポリ(2,5-ピリジンビニレン)は高分子発光ダイオードを目的として研究が行われてきた。しかしこの骨格もピリジンホモポリマー同様有機薄膜太陽電池のn型半導体材料として用いた例は極めて少ない。そこでこの分子を目標に合成を試みた。モノマーとなるジシアノメチレン部位を持つピリジンモノマーは2,5-ジブロモピリジンより3段階で合成された。このモノマーの実際の重合反応では分子量約2000のオリゴマーを得ることに成功した。今後さらなる条件検討を行うことで高分子量体の合成を試みる予定である。 次によりアクセプター性の強い構造を探索し,注目したのはピリジン骨格からわずか2段階で誘導可能なテトラゾロピリジン骨格である。テトラゾロピリジン骨格は生理活性物質や医薬品のリード化合物として重要な骨格ではあるが,これをアクセプターユニットとして用いた例はない。そこで実際に合成しアクセプターユニットとして機能しうるかについて検討を行った。Stilleカップリングを用いてジアリールピリジンオキシドを合成し環化反応を行ったところ目的とするテトラゾロピリジンを得ることに成功した。得られた3量体テトラゾロピリジンの中でドナー性の置換基を持つものは紫外可視吸収スペクトル,蛍光スペクトル,およびサイクリックボルタメトリーの結果からテトラゾロピリジン骨格がアクセプターユニットとなりD-A-D型の構造として働いていることが示唆された。テトラゾロピリジンを含むオリゴマーを用いてFETデバイスを作成したところ,この化合物がホール輸送特性を有し,p型の半導体材料として機能することがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ピリジン交互共重合体の合成では,LUMOの値をDFT計算により見積もることで側鎖部位の置換基効果が大きいことが予測され分子設計に生かすことができた。実際の合成ではモノマー分子の合成までは問題なく合成することに成功している。重合反応はいくつか条件の検討を行っているがいまだ低分子量のオリゴマーしか得られていないため,触媒等を検討することによりさらなる分子量の伸長を試みる必要がある。この結果は当初の目標より若干遅れているので今後さらに研究を進めていく必要がある。 テトラゾロピリジンを用いたアクセプター分子の合成についてはいまだ未知化合物であったジアリールテトラゾロピリジンの合成に成功し,この骨格がアクセプターユニットとして動作することを示した。またテトラゾロピリジンを含む5量体オリゴマーを合成することにも成功し,実際にFETデバイスを作製することでその分子がp型半導体材料として機能することを示した。こちらの結果は当初の目標通り十分に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
ピリジン共重合体に関しては高分子量体の合成を目標にさらに検討していく。また合成できたポリマーは紫外可視吸収スペクトル,蛍光スペクトルにより分光学的な性質を,サイクリックボルタメトリー測定により電気化学的な特性を明らかにしていく予定である。また実際に太陽電池のデバイスを作製しその結果を次の分子設計にフィードバックさせていきたいと考えている。 テトラゾロピリジン骨格合成に関しては,実際に測定した分子はp型で移動度が低かったため次に目標とするものはn型でより移動度を向上させるべくテトラゾロピリジンが縮環した構造を持つものを目標とすることを考えている。こちらも各種測定をすることで分光学的,電気化学的性質を明らかにした上で実際にFETデバイスを作製して行く予定である。
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