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2014 年度 実績報告書

霊長類のメタ記憶処理大脳神経回路のfMRIによる同定と遺伝学的介入による動態変化

研究課題

研究課題/領域番号 14J05926
研究機関東京大学

研究代表者

宮本 健太郎  東京大学, 医学系研究科, 特別研究員(PD)

研究期間 (年度) 2014-04-25 – 2017-03-31
キーワードメタ記憶 / 機能的磁気共鳴画像法 / マカクサル / 前頭前野 / 確信度判断 / 国際研究者交流 / イギリス
研究実績の概要

2頭の再認記憶課題訓練済みのサルに対して確信度判断課題を訓練し、課題遂行中の全脳の活動を機能的磁気共鳴画像法(fMRI)により計測した。確信度判断には,賭けパラダイム(Bet paradigm) (Middlebrooks and Sommer, 2011)を用いている。この確信度判断課題は、先行する再認記憶課題において正解したと思われる時は「高確信度」のターゲット、そうでない時は「低確信度」のターゲットを選ぶような戦略をとると、与えられる報酬の期待値が最大化するようにデザインされている。実際に、fMRI実験中に、サルが高確信度ターゲットを選んだ場合と低確信度ターゲットを選んだ場合の、先行する再認記憶課題の成績を比較すると、安定して前者の方が後者よりも有意に高くなっていた。このことから、サルは記憶の確信度(メタ記憶)に基づいて課題を解いていたと考えられる。そこで、fMRIにより取得した画像をもとに、記憶の確信度判断に関わる領域を同定した。すると、当初の予想と異なり、記憶の確信度判断のコアとなる領域が、想起する記憶の種類によって異なることが新たに見出された。
従来は、メタ記憶のような高度な情報処理プロセスについて研究を行うのは、ヒト以外の動物種においては困難と考えられてきた。本研究の成果は、記憶の確信度判断に関わる大脳処理ネットワークが、言語による思考能力を有さない霊長類においてもヒトと同様に存在し、そのネットワークが大脳皮質の広範な領域に広がっていることを初めて示したという点で大きな意義があると考えられる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初の研究計画のとおり、平成26年度中に、メタ記憶課題遂行時の2匹のマカクサルの全脳活動を記録するためのfMRI実験を行った。解析の結果、両方のサルに共通する複数のメタ記憶処理に関わる領域からなるネットワークを同定した。本研究は3年の研究期間の間に、1)サルのメタ記憶ネットワークを同定し、2)そのネットワークに実験的介入を行った際のサルの行動に与える影響を観察することを目標としている。2つの大きな目標のうち、前半部1)がすでに達成され、順調に研究が進捗していると言える。また、平成26年度中には、後半部2)の準備として他のサルを対象とした予備実験を行い、神経活動を記録しながら介入を行う方法を確立した。

今後の研究の推進方策

当初は、Tet-on配列を持つAAV9ベクターを用いて遺伝学的介入を行い、記憶の確信度判断関連領域を不活化した時の行動指標への影響を観察することで、メタ記憶関連領域の活動とサルの行動との間の直接的因果を調べるという研究計画を立てていた。しかし、この手法は、ベクターを感染させた領域の神経活動を、経口投与したドキシサイクリンの働きによって制御するという方法に拠っており、fMRI実験で同定した複数の確信度判断関連領域の神経活動を別々に抑制することが出来ない。そこで、ムシモル(GABAA 受容体アゴニスト)を用い、fMRI実験によって同定されたそれぞれの領域に対して別々に薬理学的介入を行い、それぞれの介入による行動指標への影響に乖離が見られるかどうかを検討するという研究計画を新たに設計した。この薬理学的介入実験によって、fMRI実験から導かれた「記憶の種類によって確信度判断に寄与するシステムが変わる」という仮説が直接検証されることが期待される。この実験を平成27年度に行うことを計画している。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2015 2014

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Dynamically allocated hub in task-evoked network predicts the vulnerable prefrontal locus for contextual memory retrieval in macaques.2015

    • 著者名/発表者名
      Osada T., Adachi, Y., Miyamoto, K., Jimura, K., Setsuie, R., Miyashita, Y.
    • 雑誌名

      PLOS Biology

      巻: in press ページ: in press

    • DOI

      in press

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] 霊長類に共通の大脳記憶回路の解明―記憶課題遂行中のマカクサルの脳機能マッピング2014

    • 著者名/発表者名
      宮本健太郎
    • 雑誌名

      Clinical Neuroscience

      巻: 32(12) ページ: 1431-1433

  • [雑誌論文] Remapping of memory encoding and retrieval networks: insights from neuroimaging in primates.2014

    • 著者名/発表者名
      Miyamoto, K., Osada, T., Adachi, Y.
    • 雑誌名

      Behavioural Brain Research

      巻: 275 ページ: 53-61

    • DOI

      10.1016/j.bbr.2014.08.046.

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [学会発表] Dissociable memory formation processes within the macaque medial temporal lobe2014

    • 著者名/発表者名
      Miyamoto, K., Adachi, Y., Osada, T., Watanabe, T., Setsuie R., Kimura, HM., Watanabe, T., Miyashita, Y.
    • 学会等名
      北米神経科学学会2014
    • 発表場所
      ワシントンDC(米国)
    • 年月日
      2014-11-19
  • [学会発表] マカクザルの内側側頭葉における記憶記銘中の活動パターンは事後想起成績を予測する2014

    • 著者名/発表者名
      宮本 健太郎,足立 雄哉,長田 貴宏,渡部 喬光,木村 紘子,節家 理恵子,渡辺 朋美,宮下 保司
    • 学会等名
      第37回日本神経科学大会
    • 発表場所
      横浜
    • 年月日
      2014-09-13

URL: 

公開日: 2016-06-01  

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