研究課題
本研究の目的は、埋め込みに失敗した不良膜タンパク質の分解メカニズムの解明である。この目的を達成するため、本研究者はこれまで不良膜タンパク質モデルをデザインし、このモデル基質の認識・分解に関わる因子としてUBQLN4を同定してきた。しかしながら、この因子が細胞内に生じうる内在性不良膜タンパク質の分解に関与するかは謎であった。昨年度、膜タンパク質の埋め込みに関わる因子SRP54のノックダウン(KD)系を確立した。また、SRP54 KD条件下でUBQLN4が特定の不良膜タンパク質と強く相互作用することを世界で始めて明らかにした。本年度はUBQLN4が特定の不良膜タンパク質だけでなく、他の内在性不良膜タンパク質も認識することを検証した。そのため本研究者はSRP54 KD条件下で、UBQLN4と相互作用するポリユビキチン化タンパク質の量を免疫沈降法で確認した。その結果、SRP54 KD条件下でUBQLN4と相互作用するポリユビキチン化タンパク質量が増加した。この結果から、UBQLN4は他の内在性不良膜タンパク質も認識する可能性が明らかになった。次に内在性不良膜タンパク質の品質管理機構にUBQLN4が関与することを明らかにするため、SRP54とUBQLN4の各遺伝子KD条件下で膜タンパク質の安定性や細胞死の検討を行った。しかし、SRP54とUBQLN4を同時にKDすることができず、実験系を構築することはできなかった。そのため、SRP54をKDする代わりに膜タンパク質埋め込み阻害剤を用いて、内在性不良膜タンパク質を誘導する実験系を確立した。現在、この研究を海外の研究グループと共同に行っている。
1: 当初の計画以上に進展している
膜タンパク質埋め込み因子であるSRP54ノックダウン系と膜タンパク質阻害剤を用いた実験系より、UBQLN4は内在性不良膜タンパク質の分解に関与する可能性が明らかになった。また、これらの成果に関する学術論文を発表することができた。したがって、研究は順調に進展していると考えている。
本研究者は膜タンパク質品質管理因子であるBAG6とUBQLN4が互作用することを明らかにした。しかしながら、両者が結合する生物学的意義は解明されていない。そこで私はこの課題を解決するため、BAG6と相互作用しないUBQLN4変異体を作製し、これを細胞にノックインする。このノックイン細胞で膜タンパク質の認識や代謝を解析することにより、BAG6-UBQLN4の複合体形成の意義を明確に示す。また、UBQLN4が内在性不良膜タンパク質の分解に関与することを明らかにするため、UBQLN4の機能阻害と膜タンパク質埋め込み阻害剤を同時に施した時の細胞死、凝集体形成の有無などを調べる予定である。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
EMBO Reports
巻: 未定 ページ: 未定
10.15252/embr.201541402
FEBS Journal
巻: 283 ページ: 662-677
10.1111/febs.13618