本研究の目的は、埋め込みに失敗した不良膜タンパク質の代謝メカニズムの解明である。この目的を達成するため、本研究者はこれまで不良膜タンパク質モデルをデザインし、このモデル基質の認識・分解に関わる因子としてUBALN4を同定した。しかしながら、UBQLN4が不良膜タンパク質モデルだけでなく、細胞内に生じうる内在性不良膜タンパク質の分解に関与するかは謎に満ちていた。そこで本研究者は内在性不良膜タンパク質を誘導するため、トランスロコン特異的阻害剤を用いて検証した。UBQLN4 KD条件下かつトランスロコン阻害剤を用いると、コントロールKD条件下に比べ、細胞内に蓄積するユビキチン化タンパク質量が増加した。また、免疫染色法を行った結果、ユビキチン陽性凝集体が観察された。この結果はUBQLN4が細胞内に生じる内在性不良膜タンパク質の分解に関わることを示唆している。次に本研究者は蓄積したユビキチン化タンパク質の中に膜タンパク質が含まれていることを検証するため、一回膜貫通型タンパク質VCAM1の挙動を調査した。VCAM1はトランスロコン阻害剤存在下で不良膜タンパク質として速やかに分解されるタンパク質である。UBQLN4 KD条件下かつトランスロコン阻害剤存在下で、不良VCAM1が安定化すること、また可溶性・不溶性分画を行った結果、不溶性画分に不良VCAM1が多く存在することを見出した。これらの結果から、UBQLN4は内在性不良膜タンパク質の分解に関与することを初めて明らかにした。
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