本研究は,廃タイヤを混和材として活用することにより,凍結融解に対して高い抵抗性を有するコンクリート材料を開発することを目的としている。本年度は,前年度に得られた結果をより詳細に分析するとともに,廃タイヤチップ混入供試体の諸特性の評価に関する追加実験を行い,廃タイヤチップの混和材としての適用性を定量的に検証した。 まず,廃タイヤチップの混入によるモルタル供試体の密度の変化を検討した。廃タイヤチップの混和材としての実利用を想定した場合,混入量と密度の低下量を確実に把握しておく必要がある。結果として,廃タイヤチップの置換率の増加に伴い,モルタル供試体の密度は線形的に低下することが確認できた。本研究では,凍結融解抵抗性を有するコンクリート構造物の開発を最終的な目的としており,軽量コンクリートの開発を目的とするように,骨材の軽量性は長所とはならない。よって,本研究の利用目的では,強度の確保が可能な範囲で,置換率は最少となることが望ましいと考えられた。 つづいて,廃タイヤチップの混入がモルタル供試体の強度特性に及ぼす影響を評価した。結果として,廃タイヤチップの置換率の増加に伴い,圧縮強度と曲げ強度はともに低下することが確認できた。一般的なコンクリートでは,水セメント比を一定として空気量を増加させると,空気量1%につき圧縮強度は4~6%低下する。加えて,コンクリートにAE剤を使用して空気量を4~5%にすると,凍結融解抵抗性が向上することが知られている。つまり,凍結融解抵抗性の高いAEコンクリートでは,同一配合でAE剤無混入のコンクリートと比較して,圧縮強度は最大で30%程度低くなると推察できる。よって,廃タイヤチップ混入による圧縮強度の低下率が約30%以内になることを目安とすると,本研究目的で利用可能と想定される廃タイヤチップの置換率は,10%程度が上限と考えられた。
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