研究課題/領域番号 |
14J05973
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研究機関 | 福井県立大学 |
研究代表者 |
山田 和正 福井県立大学, 生物資源学研究科, 特別研究員(DC2) (20778401)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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キーワード | パルマ藻 / 核分裂 / 中心小体 / 紡錘体 / 微小管形成中心 / 珪藻 / 不等毛植物 / 珪酸質外被 |
研究実績の概要 |
海洋性単細胞藻類のパルマ藻は,水圏の重要な基礎生産者である珪藻の姉妹群で,珪藻同様に珪酸質の細胞外被を持つ。本研究では,他の生物と類似性の低い珪藻の細胞生理・形態学的特性の進化過程を探るため,パルマ藻の細胞分裂と細胞外被構築様式を解析し,珪藻との比較を試みている。
平成26年度は,パルマ藻の細胞内微細構造,特に微小管の形成起点の構造と核分裂過程を明らかにし,珪藻と比較するため,細胞内構造の保持に優れる急速凍結置換法で固定したTriparma laevis NIES-2565の1細胞全体を,連続的に切片化し,各切片の透過型電子顕微鏡解析を行った。
その結果,T. laevisは,珪藻の微小管の形成起点に存在する構造を持たず,中心小体を持つことが明確となった。中心小体は一般に150 nm以上の長さがあり,間期には1細胞に2つ存在するが,T. laevisの中心小体は約80 nmの長さしかなく,間期の細胞1つあたりに少なくとも4つ以上存在した。また,T. laevisの中心小体は,間期や核分裂中期には微小管形成起点に位置する一方,紡錘糸微小管の形成開始時には形成起点に存在しないことがわかった。T. laevisの紡錘体形成過程は,核外で紡錘糸微小管の束が形成される点で珪藻と同様であった一方,動原体微小管と考えられる微小管が核内へ進入する部位でのみ核膜が崩壊する点や,紡錘体極が核外に存在する点では,核膜全体の崩壊を通じて紡錘体が核内へ進入する珪藻と異なっていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
急速凍結置換法で固定したパルマ藻Triparma laevis NIES-2565の細胞全体を透過型電子顕微鏡で観察することで,紡錘体の構造と形成過程が珪藻と類似することおよび,微小管の形成起点に存在する構造が珪藻とは異なることを明確に示せたため。
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今後の研究の推進方策 |
珪藻では,微小管の形成起点に存在する構造やミトコンドリアが,細胞外被を合成する珪酸沈着小胞の近傍に位置して外被構築に関与する可能性が示されている。来年度は,パルマ藻Triparma laevis NIES-2565の中心小体や,中心小体を起点に形成される微小管,ミトコンドリア等の細胞小器官と外被構築との関わりを明らかにするため,外被構築過程における各細胞小器官の局在を透過型電子顕微鏡解析で明らかにすると共に,微小管の重合や脱重合の阻害剤を用いて,外被構築における微小管の機能を明らかにする。
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