研究課題/領域番号 |
14J06085
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
和田 直久 日本大学, 生物資源科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | サンゴ / 黒帯病 / 病因解明 / 病理組織学的解析 |
研究実績の概要 |
本研究は、世界中で被害が報告されている黒帯病(BBD)の進行速度の違いを利用した進行要因の解明を目的とするものである。なお、本調査を進めるにあたり、基礎情報としてBBDの発生要因の調査も並行して実施した。 すなわち、発生要因の調査として平成26年度では沖縄県慶良間諸島阿嘉島においてBBDに罹患しているサンゴの調査を行い、6月に119群体、8月に258群体、10月に393群体を確認した。そこで、発生要因として罹患サンゴの群体サイズや水深、および同群体周辺の水温、光照度、各種栄養塩の測定を行い、海域内における“BBDの発生数”と各種発生要因との関係を検討した結果、重回帰解析により、正で水深と最大照度、負で無機態リンが発生数に影響し得ると評価された。また、“BBDの発生率”と発生要因との関係性をバイナリーレスポンスモデルで検討したところ、水深が浅い(p = 0.004)、無機態リンは低い(p = 0.022)に比例して黒帯病の発生率が上昇すると評価された。 BBDの進行要因の検討では、2つの海域(阿嘉島,瀬底島)で調査を行った結果、進行速度は阿嘉島の6月で1.08~4.49、8月で0.30~5.65、10月で0.52~5.08、瀬底島の8月で0.99~5.96 mm/dayと群体間の差異を確認した。そこで進行速度が最も速いまたは遅い5群体のBBD罹患部を切り出し、病理組織観察を行ったところ、進行速度の違いによって異なる細菌叢の局在を確認した。現在、特に進行速度が速い群体に特異的に確認された微生物群の種構成の解析を進めている。 以上のことから、採用1年目の「研究実施計画」通り、BBDの進行速度の差異を利用した進行要因の解明につながる知見や試料を入手することができた。次年度は上記進行要因の詳細な解析に加え、得られた発生要因との関わりについても解析を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
「研究実施計画」予定の通り、黒帯病(BBD)の進行要因と密接に関わる微生物群の局在を確認した。本年度では本調査と並行してBBDの発生要因に関する知見も得られており、「研究実施計画」以上の成果が得られたことから、達成度の区分を①とした。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、黒帯病(BBD)の群体間で進行速度が異なる現象に着目し、特にBBDの進行に関わる病因を解明しようとするものである。次年度は、病理組織観察により罹患部の進行に関わることが推定された微生物群の種構成の解析を進める。本解析は、レーザーマイクロダイゼクション顕微鏡により病理組織観察で確認した微生物群自体を切り出して実施するものであり、従来の物理的採取法に比べ、罹患部位に局在する微生物群を正確に特定できることを期待している。加えて、上記微生物群の病原性試験や得られたBBDの発生要因との関連性についての研究を進め、BBDの発生から進行に至る全体像を明らかにしたい。
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