研究課題/領域番号 |
14J06119
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
宮坂 勇輝 新潟大学, 医歯学総合研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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キーワード | 遺伝学 / マウス / コンソミック系統 / 加齢性難聴 / Lrrc30 / Cdh23 |
研究実績の概要 |
本年度は、加齢性難聴感受性系統であるC57BL/6Jおよび加齢性難聴抵抗性系統MSM/Msマウス間のコンソミックマウスの解析によって同定した加齢性難聴遺伝子座ahl3の実態解明を目的とし、その有力な候補遺伝子であるLrrc30の遺伝子導入・ゲノム編集マウスの作製・解析およびLRRC30と相互作用する蛋白質の探索を実施した。 1. Lrrc30の加齢性難聴抑制効果の検証: Lrrc30の加齢性難聴抑制効果を検証するため、Lrrc30を含むMSM/Ms 由来のBACクローンをC57BL/6Jに導入したトランスジェニック (Tg) マウスを作製し、Lrrc30遺伝子の発現量回復、およびその効果による聴力回復を調査した。その結果、TgマウスのLrrc30の発現量は、C57BL/6Jと比較して約5倍高く、MSM/Msのレベルまでその発現量は回復していた。さらに、Tgマウスの聴力閾値を調査した結果、Tgマウスの低・中周波数領域における聴力閾値はC57BL/6Jと比較して、有意に回復していた。 2. Lrrc30 ゲノム編集マウスの樹立: CRISPR/Cas9システムを介したLrrc30のゲノム編集個体の作製を試み、3種の変異個体 (Lrrc30Gln116_ Leu118, Lrrc30Gln116AsnfsX57 およびLrrc30Glu88X) の作製に成功した。Lrrc30Gln116_ Leu118および Lrrc30Gln116AsnfsX57系統は、野生型と比較して微弱ではあるものの、聴力差が認められた。 3. LRRC30と相互作用する蛋白質の探索・同定: LRRC30は成熟後の内耳有毛細胞の感覚毛に点在的に発現し、C57BL/6Jマウスの加齢性難聴の主要な責任遺伝子であるCDH23の発現パターンと類似していることから、LRRC30およびCDH23の免疫二重染色を行った。その結果、LRRC30は内耳有毛細胞感覚毛上においてCDH23と部分的な共局在することが明らかとなり、LRRC30はCDH23と相互作用する可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Lrrc30遺伝子導入実験による聴力回復実験において、C57BL/6Jマウスの加齢性難聴がLrrc30を含むMSM/Ms由来のBACクローン導入により抑制できたことは大きな進展である。また、現段階において解析途中ではあるものの、ゲノム編集によってLrrc30マウス変異体を順調に樹立できたことも大きな成果である。また、LRRC30蛋白質と相互作用する蛋白質の探索・同定に関する研究については、一つの分子との相互作用を示唆するデータを得た。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は以下の大きく2つの解析を中心に研究を展開する。 1. Lrrc30の加齢性難聴における感受性 (抵抗性) 効果の検証 Lrrc30の加齢性難聴における感受性 (抵抗性) 効果をより詳細に解析するため、歪成分耳音響反射の測定、および走査型顕微鏡を用いた有毛細胞感覚毛の形態観察を実施し、TgマウスおよびLrrc30ゲノム編集マウスの詳細な聴覚機能を検証する。 2. LRRC30と相互作用する蛋白質の同定 酵母2ハイブリッドスクリーニングおよびin vitroの相互作用解析により、LRRC30と相互作用する蛋白質を同定し、相互作用が示唆された蛋白質については免疫染色により内耳有毛細胞の感覚毛における発現・局在を調査する。さらに、CRISPR/Cas9システムによりノックアウトマウスを作製し、聴覚の表現型解析を実施することでヒト加齢性・老齢性難聴のマウスモデルとしての評価を行う。
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