本研究の目的の一つはパプアヒメアマガエル亜科のニューギニア島への分散ルートの解明である。Oreophryne属は本亜科の中で唯一、ニューギニア島だけでなく、東南アジアの複数の島に点在する。特にO. monticolaという種は生物分布境界線のウォレス線を越えてインドネシアのバリ島に分布しており、本亜科の分散ルートを解明するための鍵となると期待される。本種を採取するため、Kurniawan博士(Brawijaya University:インドネシア)にご協力いただき、4月27日から一週間程度現地にて本種を探した。残念ながら採取はできなかったが、生息場所に関する詳細な情報を地元住民から得ることができた。 ニューギニアでの両生類調査はいまだ十分ではなく、今後も多数の新種が発見されるのは間違いない。また、現在の分類体系を整理するためには、分子情報の利用が効果的であるが、古い標本しかない種ではDNA情報が得られない場合もあり、新たな標本の収集は必須である。特に昨年の解析で複数の新種候補の存在が明らかになったHylophorbus属では、その属模式種であるH. rufescensの基準産地標本のDNA情報がまだ報告されていない。比較のためにもこのDNA情報が必要だが、現状ではDNA解析に利用できる標本がない。そこで、共同研究者のAllison博士(Bishop Museum:ハワイ)とともに7月から一か月半ほどパプアニューギニアでサンプルの採集を行った。採集地はヴィクトリア山周辺およびDaru近郊で、後者はH. rufescensの基準産地である。その結果、ヴィクトリア山周辺で100個体ほど、Daru近郊でも目的のH. rufescensと思われるカエルを2個体採集することができた。収集した標本は船便で輸送している。トラブルもあり輸送が遅れているが、到着次第解析を行う予定である。
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