住環境にはアレルギー疾患を引き起こすアレルゲンが多種存在し、ハウスダストとともに堆積しているのみならず、居住者の日常生活動作に伴う気流の変化により空間中に浮遊・拡散している。アレルギー疾患の予防や治療のため、住環境における浮遊アレルゲンの濃度分布をモニタリングするには、気相成分の捕集から抗原の検出までを一括してオンサイトで実現することが求められる。そこで、抗原に特異的な抗体を磁気微粒子に固定化し、連続的に免疫学的測定を行うシステムを着想した。昨年度までに中空構造を有するマイクロメートルサイズの磁気微粒子を作製した。今年度は、作製した磁気微粒子表面への捕捉抗体固定化方法について検討をすすめ、Der f1に対する免疫計測への展開可能性を評価した。捕捉抗体の固定化方法として、磁気微粒子表面に金ナノ粒子(AuNP)を結合させる方法を採用した。まず、磁気微粒子にpoly(ethyleneimine) (PEI)を被覆し、その後tetrachloroauric(III) acid及び還元剤としてホルムアルデヒドを加えることによりAuNPを成長させた。水で洗浄することで成長反応を停止し、この磁気粒子と抗マウスIgG抗体を混合することで抗体を固定化した。磁気粒子と混合前後のIgG溶液について、液中のIgG量を比較したところ、粒子混合後にはIgGの顕著な減少が確認されたことから、粒子へのIgGの結合が示唆された。更に、得られた磁気微粒子をDer f1免疫計測に展開したところ、Der f1に由来するシグナル増強が確認されたことから、本粒子が連続的な免疫計測にも有効であることが示唆された。しかしながら、作製した捕捉抗体固定化粒子では抗原や検出抗体の非特異的な結合も観察されており、洗浄操作の改良等、今後更に検討が必要である。
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