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2015 年度 実績報告書

脳型NCXスプライシングバリアントの病態生理学的意義に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 14J06142
研究機関大阪大学

研究代表者

河内 琢也  大阪大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)

研究期間 (年度) 2014-04-25 – 2017-03-31
キーワードNa+/Ca2+交換系 / てんかん / 発達障害 / 自閉症
研究実績の概要

本研究は、中枢神経系でのNa+/Ca2+交換系(NCX)の生理病態的意義の解明を目指し、特に、てんかんや自閉症などの疾患におけるNCX1サブタイプと、その脳特異的スプライシングバリアントの機能的役割を明らかにすることを目的とする。
本年度は、NCX1の選択的阻害薬であるSEA0400を用いて、PTZ誘発キンドリング形成におけるNCX1の関与について検討した。PTZの慢性投与によるキンドリングの形成は、陽性対照として用いた抗てんかん薬バルプロ酸の併用により抑制された。しかしながら、同条件下においてSEA0400はキンドリングの形成に影響を与えなかった。このことから、PTZによるてんかん原性獲得に、NCX1の発現変化は直接関与していない可能性が考えられた。
一方、発達障害モデルとして知られる胎生期バルプロ酸(VPA)投与モデルの海馬や大脳皮質では、過酸化脂質や一酸化窒素の産生量増加していることが報告されており、抗酸化作用を有するアスタキサンチンにより、酸化ストレスの抑制と自閉症様行動の改善が認められている。このことから、一酸化窒素の下流分子として知られるNCXが、自閉症の病態発現やその改善に寄与している可能性が示唆される。本年度はまず、胎生期のVPA投与が、マウス脳内のNCX発現に与える影響について検討した。胎生12.5日目の母マウスにVPAを投与し、6時間後の胎仔全脳を解析した結果、NCX1 mRNAの著名な減少とNCX2 mRNAの増加が認められた。我々は、胎生14.5日目の母マウスにVPAを投与した場合には、成体期において自閉症様行動を発現しないことを見出しており、今後、異なる胎生期でのバルプロ酸投与の影響を解析することで、胎生期でのNCX1発現変動の意義の詳細を追究していく予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

中枢神経系でのNa+/Ca2+交換系(NCX)の生理病態的意義の解明を目指し、特に、てんかんや自閉症などの疾患におけるNCX1サブタイプと、その脳特異的スプライシングバリアントの機能的役割を明らかにすることを目的とした研究を行い下記の研究結果を得た。
①ペンチレンテトラゾールの慢性投与によるキンドリングの形成は、選択的NCX1阻害薬によって改善されないことが示された(PTZによるてんかん原性獲得に、NCX1の発現変化は直接関与していない事を示唆する)。
②胎生期バルプロ酸投与マウスの胎仔脳において、NCX1およびNCX2 mRNAの発現異常を認めた。
これらの成果の一部は、既に学術雑誌に公表しており、計画的に研究を進展させているものと考えられる。

今後の研究の推進方策

今後は、自閉症病態におけるNCXの役割を明らかとする事を目的として、胎生14.5日VPA投与マウスを用ることで胎生期でのNCX発現変動の意義の詳細を追究する。
また、未だ明らかでない中枢神経系NCX1の機能的役割について、スプライシングバリアントレベルで解明することを目的に、脳型・心臓型・その他の臓器に特異的に発現しているNCX1のスプライシングバリアント(NCX1.1, 1.3, 1.4, 1.5, 1.6等)の安定発現株の作製について検討を行う予定である。現在、NCXタンパク質の細胞膜・細胞質内での局在変化を解析することを目的に、緑色蛍光蛋白質であるGFPとNCXの融合タンパクを発現するpAcGFP1-N3の改変ベクターを調製するためライゲーションを試みたが、現時点では成功していない。今後、インサートDNA調製のためのプライマーの確認や、大腸菌の選択、抗生物質の濃度等について、至適な条件を設定し、NCX1スプライシングバリアント安定発現細胞株の作製を目指す。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2016 2015

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Decreased expression of hippocampal Na+/Ca2+ exchanger isoform-1 by pentylenetetrazole kindling in mice.2015

    • 著者名/発表者名
      Kawanai T, Taruta A, Inoue A, Watanabe R, Ago Y, Hashimoto H, Hasebe S, Ooi Y, Takuma K, Matsuda T
    • 雑誌名

      Epilepsy research

      巻: 115 ページ: 109-112

    • DOI

      10.1016/j.eplepsyres.2015.06.002.

    • 査読あり
  • [学会発表] マウス新生仔期VPAC2受容体活性化による感覚情報処理機能の障害.2016

    • 著者名/発表者名
      吾郷由希夫, Michael Condro, 早田敦子, 河内琢也, 橋本 均, James Waschek.
    • 学会等名
      日本薬学会第136年会
    • 発表場所
      横浜
    • 年月日
      2016-03-26 – 2016-03-29
  • [学会発表] 成熟雄性マウスの行動表現型ならびにシナプス関連蛋白質発現に対する新生仔期VPAC2受容体活性化の影響.2016

    • 著者名/発表者名
      吾郷由希夫, Michael Condro, 早田敦子, 河内琢也, 橋本 均, James Waschek.
    • 学会等名
      第89回日本薬理学会年会
    • 発表場所
      横浜
    • 年月日
      2016-03-11 – 2016-03-11
  • [学会発表] トリコスタチンA胎仔期曝露の大脳皮質由来初代培養神経細胞の成熟およびneuroligin-1発現に対する作用.2016

    • 著者名/発表者名
      河内琢也, 吾郷由希夫, 井上亜耶, 山内良介, 尾中勇祐, 橋本 均, 松田敏夫, 田熊一敞.
    • 学会等名
      第89回日本薬理学会年会
    • 発表場所
      横浜
    • 年月日
      2016-03-09 – 2016-03-11
  • [学会発表] Overactivation of the VPAC2 receptor during postnatal brain development causes prefrontal synaptic abnormalities and cognitive dysfunction in mice.2015

    • 著者名/発表者名
      Ago Y, Condro MC, Tan YV, Hayata A, Kawanai T, Cushman JD, Fanselow MS, Hashimoto H, Waschek JA.
    • 学会等名
      12th International Symposium on VIP/PACAP and Related Peptides
    • 発表場所
      Cappadocia, Turkey
    • 年月日
      2015-09-21 – 2015-09-26
    • 国際学会
  • [学会発表] Overactivation of the VPAC2 receptor during postnatal brain maturation induces changes in synaptic proteins and selective alterations in prepulse inhibition in mice.2015

    • 著者名/発表者名
      Ago Y, Hayata A, Kawanai T, Hashimoto H, Waschek J.
    • 学会等名
      第58回日本神経化学会大会
    • 発表場所
      大宮
    • 年月日
      2015-09-11 – 2015-09-13

URL: 

公開日: 2016-12-27  

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