研究課題
我々はこれまでに、妊娠中の抗てんかん薬服用により出生児の自閉症発症リスクが増大するという臨床知見に基づいて作製した疾患モデル動物、すなわち胎生期のバルプロ酸投与マウスが発達障害モデルとして有用であることを明らかにしている。胎生期バルプロ酸投与モデルの海馬や大脳皮質では、酸化ストレスマーカーである過酸化脂質や一酸化窒素の産生量増加が、他のグループから報告されており、抗酸化作用を有するカロテノイドの一種、アスタキサンチンにより、酸化ストレスの抑制と自閉症様行動の改善が認められている。このことから、一酸化窒素の下流分子として知られるNa+/Ca2+交換系(NCX)が、自閉症の病態発現やその改善に寄与している可能性が示唆される。昨年度は、胎生12.5日目の母マウスにバルプロ酸を投与した6時間後の胎仔全脳において、NCX1 mRNAが顕著に減少しNCX2 mRNAが増加していることを明らかとした。本年度では、胎生12.5日目の母マウスにバルプロ酸を投与した12時間および24時間後の遺伝子発現解析を行った。その結果、NCX1およびNCX2 mRNAの発現量に有意な変化は認められなかった。これらの結果から、胎生12.5日目のバルプロ酸投与は、一過的に胎仔脳のNCX1 mRNAおよびNCX2 mRNAの発現を変化させることが明らかとなった。一方我々は、胎生14.5日目の母マウスにバルプロ酸を投与した場合には、成体期において自閉症様行動を発現しないことを見出している。そこで、胎生14.5日目のバルプロ酸投与が胎仔脳のNCX mRNA発現量に与える影響を検討した結果、胎生12.5日目でのバルプロ酸投与同様、NCX1 mRNAの発現が減少しNCX2 mRNAの発現が増加していることを明らかとした。このことから、胎生12.5のバルプロ酸投与によって誘発される自閉症様の行動異常に、バルプロ酸投与の一過的なNCX1およびNCX2 mRNA発現変化が直接的には関与していない可能性が考えられた。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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Neurochemical Research
巻: 41 ページ: 2574-2584
10.1007/s11064-016-1969-y
http://molpharm.umin.jp/