研究課題
IQ motif containing GTPase Activating Protein 1(以下IQGAP1)は足場タンパク質として細胞骨格の配向を制御し、細胞遊走や細胞間接着に関与する分子であるが、近年、IQGAP1欠損T細胞でT細胞受容体(TCR)シグナルが亢進することが報告されるなど、免疫システムにおける役割が明らかになりつつある。本研究ではCD4+T細胞の機能制御におけるIQGAP1の役割について解析する。まず、野生型マウス、IQGAP1欠損マウスの脾臓から単離したCD4+T細胞を6Gyの放射線を照射したレシピエントマウスに移入し、CD4+T細胞依存的な自己免疫疾患モデルである実験的自己免疫性脳脊髄炎(以下EAE)を誘導した。その結果、移入したCD4+T細胞依存的に症状が発症し、IQGAP1欠損により症状が増悪した。この結果と一致して、中枢神経系に浸潤したIFNγ+CD4+T細胞(以下Th1)、IL-17A+CD4+T細胞(以下Th17)の数が、IQGAP1欠損により増加した。以上の結果は、IQGAP1がCD4+T細胞の機能を制御し、自己免疫疾患を抑制することを示す。次に、CD4+T細胞分化におけるIQGAP1の役割を、in vitro分化系を用いて評価した。野生型あるいはIQGAP1欠損に由来するナイーブCD4+T細胞をTh1もしくはTh17の条件で分化誘導したところ、それぞれ同程度の分化率を示した。一方、IQGAP1欠損により細胞数の増加と、培養上清中のサイトカイン産生量の増加が観察された。このことから、IQGAP1はCD4+T細胞の分化ではなく、TCRシグナルを介した細胞増殖を制御することによって、CD4+T細胞の過剰な活性化を制御することが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
自己免疫疾患の発症制御におけるIQGAP1の重要性を示すことが出来た。また、CD4+T細胞制御におけるIQGAP1の機能についても重要な知見を得ることが出来た。上記の成果は当初の計画通りであり、研究が順調に進展していると言える。
IQGAP1の機能について、シグナルのレベルで解析する。これにより、IQGAP1がどのような機序でT細胞機能を制御し、自己免疫疾患を抑制するかを明らかにする。
すべて 2014
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Nature Immunology
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European Journal of Immunology
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