研究実績の概要 |
代表的な慢性創傷のひとつである褥瘡の早期治癒を図るためには、正確なアセスメントに基づく治療計画・看護計画の策定が重要である。私たちの研究室ではこれまで、誰もが正確に使えるアセスメントツールの開発に取り組んできた。本研究では、創面の生理的状態を客観的かつ非侵襲的にアセスメントする指標として創面のタンパク質分布パターンに着目し、創治癒過程におけるペルオキシダーゼの生物学的意義の解明を目的とした。雄性SDラット(10週および6か月齢)の背部皮膚に剪刀にて直径2.5cmの全層欠損創を作製した。創作製後1, 4, 7, 10日目に創面ブロッティング法により滲出液を採取しペルオキシダーゼ活性を検出した。滲出液採取直後に創部組織を採取し、組織学的解析を行った。その結果、滲出液中ペルオキシダーゼ活性シグナルは、リング状、非リング状のシグナルの2つに分類できた。リング状のシグナルは、創部組織における細胞・組織の壊死に関連し、炎症性細胞がそれら壊死した細胞・組織を貪食しMPOを放出または逸脱している状態を反映していることが示唆された。また、肉眼的に炎症/感染徴候を認めない創であっても、リング状のシグナルを呈する創では、創部組織においてペルオキシダーゼの細胞外への放出・逸脱所見を認めた。このことから、ペルオキシダーゼ活性シグナルを検出することで、肉眼的には捉えられない創部組織の炎症を把握可能であることが示された。人の褥瘡への外的妥当性の検証およびベッドサイドでのリアルタイムなアセスメントが可能であることを示すため、人の褥瘡を対象とし、創面ブロッティング法を用いた滲出液採取およびベッドサイドでのペルオキシダーゼ活性検出を実施した。また、肉眼的な炎症/感染徴候の有無、壊死組織の有無を観察した。その結果、ラットの結果と同様の結果が得られ、人の褥瘡への外的妥当性が示された。
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