研究課題/領域番号 |
14J06331
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
青木 是直 山梨大学, 医学工学総合教育部, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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キーワード | ブドウべと病菌 / CAA殺菌剤 / 薬剤耐性菌 / モニタリング |
研究実績の概要 |
山梨県内において、遺伝子診断法を用いたCAA殺菌剤耐性ブドウべと病菌のモニタリング調査を行った。以下にその成果を記す。 ブドウべと病菌羅病葉のサンプル採集は県内の12圃場から行った。これらの圃場は、CAA殺菌剤耐性ブドウべと病菌の広がりを見るため、CAA殺菌剤が散布されている7カ所の圃場と、散布されていない5カ所の圃場からなり、計366枚の罹病葉が採集された。その後、これらのサンプルをASP-PCR法に供試することで1次スクリーニングを行った。また、CAA殺菌剤耐性は劣性表現型であるため、1次スクリーニングにより検出されたサンプルをPCR-RFLP法に供試することで、遺伝型を特定した。 ASP-PCR法により、366サンプル中20サンプルから耐性遺伝子が検出された。これらのサンプルをPCR-RFLP法に供試したところ、すべてのサンプルにおいて耐性遺伝子および感受性遺伝子の両方が検出された。以上から、20サンプルすべてがCAA殺菌剤感受性ヘテロ体であることが確認された。これにより県内では未だにCAA殺菌剤耐性菌は出現していないが、感受性ヘテロ体の拡散が続いていることが示唆された。また、今回の調査で感受性ヘテロ体が検出された一部の圃場は、過去の調査よりも感受性ヘテロ体が増加している(Aoki et al. 2013, 2014)。同圃場は過去3年間に、通年で複数回のCAA殺菌剤を散布していることも分かっているため、CAA殺菌剤耐性ブドウべと病菌は他の薬剤耐性菌と同様に、通年で複数回の薬剤散布をすることで、耐性を獲得することが推察された。 今回、感受性ヘテロ体が検出されたすべての圃場では、CAA殺菌剤が散布されている。このため、これらの圃場では、今後も感受性ヘテロ体が増加し、自己交雑などによりCAA殺菌剤耐性菌が発生する可能性が高いため、モニタリングの継続が重要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度よりも広範囲のモニタリングを行い、かつCAA殺菌剤耐性遺伝子の広がりを確認できていることから、期待通りの成果が出せたのではないかと考える。 また、研究代表者はブドウ生産者と交渉し、各圃場から直接ブドウべと病菌罹病葉の採集を行っている。これにより生産者と直接言葉を交わすことができており、研究成果を生産者に直接還元することが可能となっている。研究成果の学会発表は、2014年度に間に合わせることができなかったが、2015年度の園芸学会秋季大会にて発表する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2013年度および2014年度の山梨県においてCAA殺菌剤感受性ヘテロ体を確認できたため(Aoki et al. 2013, 2014)、県内にCAA殺菌剤耐性遺伝子が拡散していることが示唆された。しかし、1つの圃場に対し30サンプルしか採集していなかったため、圃場全域をカバーできておらずCAA殺菌剤耐性ホモ体を確認すまでには至らなかった。 そこで2015年度におけるモニタリング調査では、2014年度の調査でCAA殺菌剤感受性ヘテロ体が検出された圃場で採集するブドウべと病菌罹病葉を100サンプルまで増やす。これにより、圃場内にCAA殺菌剤耐性菌がいないかの詳細な調査を行う。加えて、県内へのCAA殺菌剤耐性遺伝子の拡散を確認するため、2014年度に感受性ヘテロ体が確認できなかった圃場においても30サンプル採集する。その後、これらの結果をまとめ論文および園芸学会にて発表する。また、CAA殺菌剤耐性べと病菌の県内分布をネット上で公表することで、山梨県の生産者へ注意喚起を行う。
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