研究課題/領域番号 |
14J06342
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松木 康祐 東京大学, 医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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キーワード | 自然免疫 / シグナルクロストーク |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、生体にとって不利益な応答を自然免疫応答の初期の段階から選択的に抑制する機構について、PRRs経路のクロストークという観点から解明することである。これまでに、バクテリア感染時に活性化したTLR経路によってMKPファミリーがIRF3と結合し、I型IFN誘導の抑制が起きることが分かっている。しかし、MKP1、MKP5の欠損マウスではリステリア感染によるI型IFNの増強が起きない事から、さらに未知の分子の関与の可能性が示唆された。そこで、新規シグナル分子を同定するためにスクリーニングを行い、マウス胎児繊維芽細胞(MEF)においてLPS刺激によるI型IFN誘導の抑制に関わる蛋白(以下IIF1)を同定し解析した。標的配列の異なる複数種類のsiRNAを用いてIIF1をノックダウンし、解析を行った結果、特定のsiRNAのみでLPSによるI型IFN誘導の増強が見られた。このことから、IIF1がI型IFN誘導の抑制に関わるだけでなく、IIF1との共通配列をもったバリアント等が関与する可能性が示唆された。そのため、当初の予定にはなかったが、新しいバリアントの発見を目指し解析を進める予定である。また、平行して行っていたスクリーニングで、本機構に関与する可能性のある別の分子の単離に成功した(IIF2)。IIF2の解析は当初予定していなかったが、クロストークへの関与の可能性を示唆する結果が得られたことから、IIF1の解析を推進するよりも本研究の目的達成に近いと考えIIF2の解析も推進した。IIF2をMEF、Raw細胞においてsiRNAでノックダウンを行い解析した結果、核酸刺激などによるI型IFNの遺伝子誘導が劇的に減弱することがわかった。さらに、IIF2は刺激依存的にIRF3、TBK1に結合することがPLA解析によって明らかになった。今後さらに、IIF2がIFN誘導を制御する分子機構の詳細を解明する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
IIF1については、当初の予想と反してバリアントの存在が示唆される結果を得ており、今後解析を続けることで、未知のバリアントの発見やIIF1の新しい制御機構が明らかになることが期待される。また、並行し行われていたスクリーニングによってクロストークに関わる可能性のあるIIF2を同定した。IIF1と異なりIIF2をノックダウンすると劇的にI型IFN誘導が減弱することから、IIF2はI型IFN誘導に必須の因子であることが分かった。さらに刺激依存的にIRF3、TBK1と結合することから、MKPファミリーを含めた複合体を形成し、クロストークに関与する可能性が高い。このように、当初予定していなかったIIF1、IIF2の多くの知見を得られることに成功したことから、当初の計画以上に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
IIF1の新たなバリアントの解析を続けるとともに、IIF2のI型IFN誘導のメカニズムを明らかにし、MKPファミリーとの関わりを解析する。IIF1およびIIF2の解析をどのようなエフォート配分で行うかについては、得られた結果やその重要性を踏まえた上で、臨機応変に対応を検討して行く。
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