研究課題/領域番号 |
14J06364
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
長澤 翔太 東北大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | オキソアンモニウム塩 / アルケン / AZADO / エノン / シクロヘキサジエン / エン反応 / 有機分子触媒 |
研究実績の概要 |
本研究は,触媒的かつ環境調和的な方法論に乏しいアリル位C-H酸化反応について,申請者の所属研究室で見出されたアザアダマンタン型のオキソアンモニウム塩を用いた, 触媒的空気酸化手法を確立することを目的としている. 初年度となる本年度は,酸素以外の汎用酸化剤を用いる触媒的擬アリル位酸化反応について条件検討を行った,その結果,過酸構造を有する酸化剤が本反応に適うことを見だした.しかしながら,触媒と基質,酸化剤を同時に加えて反応を行うと,基質と酸化剤とが直接反応して生成するエポキシドが優先して得られることが分かった.そこで,①触媒の再酸化を早める目的で,共酸化剤を加える,②基質のエポキシドへの変換を抑えるために,触媒と酸化剤の混合溶液に基質をゆっくりと滴下する という2つのアプローチにて,目的のエノンが5割程度の収率で得られることを見出した. 一方で上記の検討に並行し,オレフィン基質の基質適用性の拡張を志向し,電子求引基を有するアザアダマンタン型オキソアンモニウム塩を用いてシクロアルケン基質に対するエン型の付加反応を検討する途上で,当初企図したアリル位酸化体ではなく,シクロへキサジエンが優先して得られるという,これまで前例のない反応を見出すに至った.本反応は新規かつ簡便なシクロヘキサジエン類の供給法となり得ることから,基質適用性の検討を行ったところ,様々な置換基を有するシクロヘキセン基質において,本反応が進行することが分かった.さらに本反応は,シクロヘキセンとオキソアンモニウム塩とが炭素ー窒素結合を生じるようにエン型の付加反応を起こすという,オレフィン類とオキソアンモニウム種との反応でこれまで殆ど報告のない経路での反応が進行していることを裏付ける結果を得た.この現象の発見ならびに証明は,今後のオキソアンモニウム塩を用いる分子変換反応における新たな指針を与えるものと位置づけられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の目的である擬アリル位酸化反応については未だ満足の行く条件が探索できていないが,その過程でこれまでに前例のない反応を発見し,そのメカニズムについても実験的に証明することができたため.
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定を変更し,まずは新たに見出したシクロヘキサジエン形成反応について基質適用性の検討を続け論文化する.さらに,本反応の触媒化への展開を目指す. 触媒化検討と並行し,当初の目的であった擬アリル位酸化反応の条件を詰める.このとき,空気酸化への展開が即座に可能であるならば,汎用酸化剤での検討は収束させる.
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