研究課題/領域番号 |
14J06373
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
遠藤 俊裕 東京大学, 医学系研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | 自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害 / カルシウムシグナル経路 / 行動柔軟性 / 社会的相互反応 |
研究実績の概要 |
本研究の初年度において、自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(ASD)の中核的症状である行動柔軟性低下を検出する試験法を脳神経系の発達異常モデル動物に適用することを試み、遠山千春研究室と協働し、発達異常によっても行動柔軟性に一定の表現型を検出する場合があることを見いだした(発表文献1,2および学会発表1)。そこで、引き続き、尾藤晴彦研究室において開発された、神経活動依存的なカルシウムシグナル経路の破綻をきたす複数のマウスモデルにおいて、行動柔軟性試験を行った。予備的な検討において、ある遺伝子欠損マウスでは、一連の学習課題において、野生型マウスに対して行動の転換が有意に遅れていた。さらに、集団飼育環境下での社会性行動の異常があることも確認された。後者の行動表現型は集団内での社会的相互反応の結果を反映していると考えられ、社会性に関するASD症状との関連が示唆される。また、扁桃体の亜核に集積する分子のノックアウトマウスにおいても、集団飼育環境下での社会性行動の異常があることが確認された。以上から、カルシウムシグナル経路に係る遺伝子の働きがASDの2つの中核的症状に関与している可能性が認められた。今後は、細胞レベルでのカルシウムシグナル経路の機能と、システムレベルでの行動表現型がどのようにリンクしているかを明らかにするため、まずは脳内の責任領域や回路の同定を明らかにすることを目指して研究を継続する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
カルシウムシグナル経路の変化という分子レベルの現象が複雑な高次脳機能異常の基盤となっていることを明らかにしていく上で、モデルとなる2系統のマウスに見られた行動表現型が再現性の高い実験結果に基づく結論であることを示すことは重要である。今回の結果は、いずれのマウス系統においても、それぞれ異なる個体群を用いて慎重を期した再実験を行っており、再現性の高い行動表現型が得られることが確認出来ている。このことから、研究プロジェクトとして順調に成果が得られていると考える。
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今後の研究の推進方策 |
分子レベルでのカルシウムシグナル経路の機能とシステムレベルでの行動表現型がどのようにリンクしているかを明らかにする為、行動柔軟性低下等のASD関連症状に関する脳内の責任領域・回路を明らかにすることを目指し、今後の研究を継続する。認知課題遂行時の個体から、行動に関連して活性化する神経細胞群を特定するための最適な方法を検討・実施していく。
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