研究実績の概要 |
TMEM16Eは8回膜貫通領域を持つ分子である。これまでに、TMEM16Eは骨や骨格筋で特異的に発現していること、顎骨骨幹異形成症(GDD)、肢帯型筋ジストロフィー(LGMD2L)、非ジスフェルリン三好筋変性症(MMD3)といった骨や骨格筋の遺伝性疾患において、ヒトTMEM16E遺伝子の変異が報告されている。しかしながら、TMEM16Eの分子機能及び生理的役割は不明である。 TMEM16Eは10個のメンバー(TMEM16A~H, J, K)からなるTMEM16ファミリーに属している。TMEM16EとK以外の分子はカルシウム依存性クロライドチャネルまたはリン脂質スクランブラーゼである。TMEM16Eは細胞質内膜系に局在しているため、既存のアッセイ系では活性を測ることができない。そこで、TMEM16Eとの相同性が最も高く、細胞膜に局在するTMEM16Fとのキメラたんぱく質を設計し、細胞膜に局在させることを試みている。現時点では、細胞膜に局在するキメラたんぱく質は得られていない。 TMEM16Eの骨格筋における生理的機能を解析するために、TMEM16Eノックアウトマウスを作製した。TMEM16Eノックアウトマウスはメンデルの法則に従って生まれる。まず、このマウスの骨格筋の細胞膜修復効率を解析するために、マウスをトレッドミルで走らせた後、血清中のクレアチンキナーゼ活性を計測した。結果、野生型と同程度であったため、細胞膜修復には関与していないと結論付けた。そして、TMEM16Eの筋繊維の再生への関与を調べるために、前脛骨筋に蛇毒であるカルジオトキシンを注射し、筋再生を継時的に観察した。しかし、差は得られず、骨格筋再生にも関与していないと考えられる。
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