研究実績の概要 |
最近, 4f2配位のPrを内包したカゴ状化合物PrT2X20 (T:遷移金属, X=Zn, Al) において, 4f電子がもつ四極子の自由度が関与する新奇な超伝導の可能性が指摘され注目を集めている。本研究では, 4f電子の多極子自由度と超伝導の相関を探るため, 同型の化合物であるPrOs2Zn20に着目し研究を行った。この化合物は, 構造相転移と超伝導転移をそれぞれTs=87 KとTc=0.06 Kで示す。本年度は, Prがもつ4f電子の電子状態を考える上で重要となる構造相転移の機構を調べた。最近行われた第一原理計算により, RT2Zn20の構造相転移では, 希土類原子と96gサイトのZn原子からなるカゴに内包された16cサイトのZn原子の低エネルギー振動が重要であることが指摘されていた。しかし, その存在を実験的に明らかにした研究報告はこれまでになかった。そこで, 150 Kで構造相転移を示す同型化合物LaRu2Zn20についてフォノン物性を調べた。非弾性X線散乱実験と比熱測定により, Zn原子の低エネルギー振動モードが 3 meVに存在することを見出した。この振動モードは, 構造相転移を示さないPrIr2Zn20やYRu2Zn20では高エネルギー側へシフトすることから, 構造相転移に寄与している可能性が高い。また, PrOs2Zn20の結晶場基底状態に関する情報を得るため, 同型構造をとる4f3配位のNdOs2Zn20を作製した。比熱と磁化を測定し, 平均場計算を行うことでNdサイトの結晶場準位を同定した。Ndの系で得られた結晶場パラメータを用いることにより, PrOs2Zn20のT>Tsでの結晶場基底状態は非磁性二重項であることがわかった。
|