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2015 年度 実績報告書

強酸性土壌に生育する植物のアルミニウム超耐性および好アルミニウム性の解明

研究課題

研究課題/領域番号 14J06461
研究機関北海道大学

研究代表者

前島 恵理子  北海道大学, 農学院, 特別研究員(DC1)

研究期間 (年度) 2014-04-25 – 2017-03-31
キーワードアルミニウム / 酸性土壌 / Melastoma malabathricum / フェノリクス
研究実績の概要

1. アルミニウム超耐性機構の解明
これまで、アルミニウム(Al)耐性が非常に強い木本植物の、Melrastoma malabathricum(メラストーマ)、Melaleuca cajuputi(メラルーカ)の根には非常に多くのフェノリクスが含まれており、それらにはAlをキレートする能力が認められていた。両植物を、0/0.5mMのAlCl3を含む完全培養液で栽培し、それぞれからフェノリクスを抽出しプロファイルの比較した。その結果メラストーマでは、±Al栽培植物由来のフェノリクスのそれぞれのプロファイルが大きく異なる一方で、メラルーカは処理間でプロファイルがほとんど同じであった。さらに、メラストーマの-Al栽培植物由来のフェノリクスにAlを添加したところ、そのプロファイルは、+Al栽培植物由来のフェノリクスプロファイルと同じになった。つまり、メラストーマのフェノリクスプロファイルが処理間で異なるのは、フェノリクスがAlと結合した結果であると考えられた。メラストーマの根でのフェノリクスの分布を観察したところ、外皮、内皮、中心柱に多く分布していた。これは、Alの分布と非常に類似している。これらの結果から、根に非常に多くのAlを集積するメラストーマで、その無毒化にフェノリクスが大きく貢献している可能性が示唆された。これらの結果をまとめ国際誌への掲載準備を進めている。

2. 強酸性土壌に生育する植物におけるアルミニウム有益性の解明
メラストーマはAlによって生育が促進されるが、その条件は報告により様々であった。昨年度の実験では、メラストーマに温度ストレスをかけた時にAlによる生育促進効果が認められた。しかし温度ストレス処理時にメラストーマは酸化ストレスを大きく受けていないことも明らかとなり仮説とは異なる生育促進機構が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

非常に強いアルミニウム耐性を持つ植物の根に含まれるフェノリクスの特徴をまとめることができた。これまでに得られた脂質や細胞壁の結果を踏まえて、根の成分とAl耐性についてまとめた論文を近く投稿予定である。

今後の研究の推進方策

1. アルミニウム超耐性機構の解明
メラストーマのAl耐性については根の成分が関与していることが明らかとなり、国際誌への投稿を予定している。

2. 強酸性土壌に生育する植物におけるアルミニウム有益性の解明
メラストーマのAlによる生育促進については、これまでの結果から低温ストレス条件下でAlによる生育促進効果が認められることがわかった。そしてこの症状は特に根で認められた。しかしこのときメラストーマは強い酸化ストレスを受けておらず、Alによる抗酸化活性の上昇により酸化ストレスが軽減されたことにより生育促進が起こるという仮説とは異なり、他の効果により生育促進が起こる可能性が示唆された。この生育促進の要因を明らかにするため、低温ストレス時にメラストーマが根で受けているストレス症状や、さらにそこにAlを与えた時の効果を代謝変動の面から調査する予定である。一方で、メラストーマは葉に非常に多くのAlを集積するため、Alの葉での作用もあると推測できる。またこれまでに光合成との相互作用も示唆されている。そこで光合成において過剰な酸化ストレスが生じると考えられる強光条件下でのAlの効果を調査する。またこれらの調査においてもAlがメラストーマに与える影響を代謝成分の変動などから調べる予定である。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2015

すべて 学会発表 (5件) (うち国際学会 4件) 図書 (1件)

  • [学会発表] Characteristics of root cell components in aluminum-tolerant woody plants2015

    • 著者名/発表者名
      Eriko Maejima, Toshihiro Watanabe, Tadao Wagatsuma, Mitsuru Osaki
    • 学会等名
      The 9th International Symposium on Plant-Soil Interactions at Low pH
    • 発表場所
      Hotel Ariston (Dubrovnik, Croatia)
    • 年月日
      2015-10-18 – 2015-10-23
    • 国際学会
  • [学会発表] Physiological variations in aluminum accumulation in different aluminum-accumulator plant species2015

    • 著者名/発表者名
      Toshihiro Watanabe, Eriko Maejima, Shyntaro Hiradate, Jun wasaki, Mitsuru Osaki
    • 学会等名
      The 9th International Symposium on Plant-Soil Interactions at Low pH
    • 発表場所
      Hotel Ariston (Dubrovnik, Croatia)
    • 年月日
      2015-10-18 – 2015-10-23
    • 国際学会
  • [学会発表] Significant role of the plasma membrane lipid bilayers in aluminum tolerance of plants2015

    • 著者名/発表者名
      Tadao Wagatsuma, Eriko Maejima, Toshihiro Watanabe, Md. Shahadat Hossain Khan, Satoru Ishikawa, Keitaro Tawaraya
    • 学会等名
      The 9th International Symposium on Plant-Soil Interactions at Low pH
    • 発表場所
      Hotel Ariston (Dubrovnik, Croatia)
    • 年月日
      2015-10-18 – 2015-10-23
    • 国際学会
  • [学会発表] アルミニウム超耐性をもつ木本植物の根に含まれるフェノリクスの特性2015

    • 著者名/発表者名
      前島恵理子、渡部敏裕、我妻忠雄、大崎満
    • 学会等名
      日本土壌肥料学会本大会
    • 発表場所
      京都大学(京都府京都市)
    • 年月日
      2015-09-09 – 2015-09-11
  • [学会発表] The characteristics of root cell components of plants2015

    • 著者名/発表者名
      Eriko Maejima, Toshihiro Watanabe, Tadao Wagatsuma, Mitsuru Osaki
    • 学会等名
      Rhizosphere 4 congress
    • 発表場所
      MECC Maastricht (Maastricht, Netherlands)
    • 年月日
      2015-06-21 – 2015-06-25
    • 国際学会
  • [図書] Aluminum stress adaptation in plants, Signaling and Communication in Plants2015

    • 著者名/発表者名
      Tadao Wagatsuma, Eriko Maejima, Toshihiro Watanabe, Md. Shahadat Hossain Khan, and Satoru Ishikawa
    • 総ページ数
      274
    • 出版者
      Springer International Publishing Switzerland

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公開日: 2016-12-27  

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