研究課題/領域番号 |
14J06472
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
野崎 華世 一橋大学, 経済研究所, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | 経済政策 / 職種 / 女性労働 / 労働経済学 / 貧困 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、人口減少社会における女性の継続就業と職種に関する実証分析を行い、職種別の女性労働力の活用並びに職種から見た少子化対策への政策的インプリケーションを導くことである。平成26年度は、出産前後の女性の継続就業と再就職について職種との関係を明らかにする分析を行った。分析の結果得られた知見は、つぎの3点である。第一に、専門職と製造職で就業継続率が高いことが明らかになった。第二に、就業継続率の高い専門職や製造職では、保育所の利用や親との同居など、育児サポートの利用率が高いことが実証的に示された。第三に、第一子出産後の再就職に関しては、出産前の職歴(職業や職業経験年数)と再就職確率に有意な相関がないことが確認された。この点は、女性の職業経歴の中で培ってきた人的資本の蓄積が再就職において活かされていない可能性を示唆している。本研究は、国際学会、国内研究大会にて研究報告を行い、修正後、雑誌に投稿中である。また、平成27年度に行う予定の就業継続と賃金の関連を分析するためのデータセットの構築作業を行った。 低スキル職の労働者が置かれている状況を分析するために、多元的貧困と幸福感(小塩隆士氏と共著)や相対的剥奪と幸福感に関する分析を行った。分析の結果、つぎの二つの知見をえた。一つは、中国の多次元貧困度は、日本および韓国のそれに比べ、高いことである。もう一つは、三カ国ともに多くのケースで、所得のみの貧困度よりも、多元的貧困度の方が、より強く幸福感を引き下げる効果を持つことである。本研究は、英文査読雑誌に投稿し、審査を受け修正、再投稿を行っている。 個票データを用いる際に注意すべき重要な問題の一つに分布の歪みがある。この分布の歪みを補正する手法に関する分析を行った(石井加代子氏と共著)。 この研究では、ウェイト変数を用いることによって一定程度分布が補正されることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
査読雑誌への掲載には至らなかったが、「女性の出産前後の就業継続と職業に関する分析」は、国内外の学会や研究会で報告を行い、いただいたコメントを元に修正後、学術誌へ投稿、審査中である。また、平成27年度に取り組む予定の、「就業継続と職業別賃金に関する分析」を行うためのデータセットの構築作業も開始している。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、分析に必要なデータセットの構築と文献のサーベイを進め、構築出来次第、分析を行っていく。利用データは政府統計であり、大規模かつデータ構造が複雑になっている。そのため、作業が遅れる可能性も考えられる。データ利用経験者に助言を求めるなどなるべく速やかに分析可能な形にデータセットを構築し、分析を行っていく。
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