平成28年度は,(1)近赤外分光分析による濃度イメージングへの応用性の検討,(2)分光イメージングのための波長フィルタリングシステムの改善,(3)濃度イメージングの測定精度の検証,(4)濃度イメージングによる反応拡散現象解析の4項目を実施した. (1)水溶液の近赤外吸収分光特性を調査し,濃度イメージングに応用するための検量実験を行った.また,昨年度取り扱ったHCl,NaOH,NaClに関して,多変量解析手法のひとつであるPLS回帰分析および重回帰分析を行い,3波長成分の吸光度変化を測定することで3成分の溶質濃度をより高精度に定量化することに成功した. (2)より高精度な画像を取得するために,レンズ系や干渉フィルタのスイッチングシステムを改善し,高精度な濃度測定および画像取り込みシステムを完成させた.また,HCl,NaOH,NaClの水溶媒中の相互拡散係数を測定し,十分な測定精度を有することを確認した.さらに,HClとNaOHの中和反応によってNaClが生成する場を観察し,各成分濃度の定量化を行い,3種類の溶質濃度が同時にかつ区別して可視定量化することに成功した. (4)可溶性の水溶液間の界面より生じる流体力学的な不安定性を本イメージングシステムで可視化し,解析を行った.その結果,対流が生じ,界面形状に変化が生じるまでの時間が上下の溶液の組み合わせによって大きく異なることが判明した.さらに,二重拡散対流を生じる条件において,各溶質の濃度イメージングから密度イメージングへと応用させ,2溶液拡散中に発生する局所的な密度低下を生じる現象を実験により確認した.また,化学反応を生じるHClとNaOHの組み合わせで観察したところ,界面より生じるNaClの存在によって,界面を介して2つの異なる対流パターンの発生を確認された.
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