研究課題
平成27年度は、環境汚染物質として知られているPerfluorooctane sulfonate (PFOS)のin vivo神経毒性研究を実施し、以下の結果を得た。・ラット新生仔脳のGluR2発現量をウエスタンブロットにより解析したところ、大脳皮質においてPFOS曝露による有意なGluR2発現低下が認められた。また、海馬、小脳においても有意ではないものの発現低下が認められた。・新生仔脳スライスを作製し組織免疫染色法によりGluR2と神経細胞マーカーであるMAP2の局在を調査したところ、PFOSを曝露した新生仔大脳皮質においてMAPと局在するGluR2の発現低下が認められた。・ラット新生仔にグルタミン酸アナログであるカイニン酸(全身投与により脳でのグルタミン酸興奮毒性を引き起こす)を腹腔内投与し脳スライスを作製後、ニッスル染色により神経細胞の形態を病理学的に調べた。その結果、コントロールのラット新生仔ではカイニン酸投与による脳の病理学的異常は認められなかったが、PFOSを曝露したラット新生仔では大脳皮質においてカイニン酸投与による病理学的異常が認められた。以上の結果から、PFOSは哺乳動物において大脳皮質におけるGluR2発現低下を引き起こし、グルタミン酸興奮刺激に対する神経脆弱化を引き起こすことが判明した。
2: おおむね順調に進展している
PFOSがGluR2発現低下に基づく神経脆弱化を引き起こすことをin vivoで明らかにしたため。
すでにGluR2発現を減少させることが分かっているトリブチルスズをマウスに投与し、神経脆弱化を引き起こすか否かを検討する。また、各脳部位における神経脆弱化関連遺伝子のmRNA発現量を評価する。
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