研究課題/領域番号 |
14J06567
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
田口 ローレンス吉孝 一橋大学, 社会学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | アメラジアン / ハーフ / 混血児 / ミックス / 社会編成論 / 人種 / エスニシティ |
研究実績の概要 |
本研究に関する先行研究として、Omi & Winant(2014)の ”Racial Formation in the United States: Third Edition ” を精読し、この理論を援用している文献を整理した。さらにConnellのジェンダー編成論や、社会構築主義の理論書を整理することで、本研究で独自の分析視座である「社会編成論」の理論的構築のための関連書籍を整理した。また、フィールド調査として沖縄への予備調査(6月27日~7月6日の10日間)、および、本調査(7月26日~9月25日の62日間)を実施した。町(もしくは字)単位で公民館の聞き取り調査を行い(40カ所)、基地周辺地域における「混血児」「ハーフ」「アメラジアン」とよばれる人々の生活の実態や差別の状況、また地縁ネットワークの有無などについてデータを得た。さらに、「アメラジアン」の成人によって2013年に設立された「アメリカ系うちなーんちゅの会」定例ミーティングに参加し、会員にインタビューを実施した。沖縄県公文書館では、琉球政府文教局による「混血児調査」の資料や、米軍政府による”Mixed Blood Children’s project”など、「混血児」に対する様々な活動の報告書や当時の国際結婚の記録等、重要な資料を得ることができた。また、マイクロフィルター機材を用い、「琉球新報」、「沖縄タイムス」両紙における「混血児」「ハーフ」「アメラジアン」に関わる記事を1945年~2002年まで検索・整理し多くのデータを得た。10月には韓国への予備調査(10月6日~10月14日の9日間)を実施した。韓国では、東豆川、安山、九老にある多文化家族支援センターを訪問しスタッフの方々から、活動内容の聞き取り、資料収集、インタビューを行った。また、韓国のアメラジアンスクールを訪問し所長にインタビューを実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
先行研究の整理によって得られた知見をもとに、本研究の独特な分析視座である「社会編成論」の土台である「人種エスニック編成論」(Omi&Winant[1994]をもとに、南川[2007]が理論化)を日本の「ハーフ」「ミックス」の事例に当てはめてインタビュー分析を行った。その成果を論文にまとめ、関東社会学会の機関誌「年報社会学論集」に投稿し、査読を受け、採用候補通知を得ることができた。また、沖縄における二度の調査によって、これまで得てきた関東圏とは異なる「ハーフ」「混血児」に関する重要なデータを得ることができた。特にインタビューデータによって、基地問題や、沖縄の文化・慣習の側面が、当事者に影響を及ぼしていることが明らかになった。また、沖縄県公文書館における新聞記事検索や、関連公文書の閲覧によって、終戦以降、マクロレベル(米軍政府・琉球政府・日本政府)さらに、メゾレベル(社会福祉施設、NGO団体、学校など)で、どのような取り組みがなされてきたのかを把握した。米軍関連の資料についてはフィールドワークが終了した後に英訳し、要旨をまとめた。この作業によって、米軍による沖縄占領の前後の時期に、「アメラジアン」に対するさまざまな政策・会議(結婚、市民権、学校教育など)が実施されていることを明らかにすることができた。また、韓国のアメラジアンスクールにおけるインタビューからは、韓国において戦後、政府主導で活発に推進された欧米への「混血児」の養子縁組がおこなわれた一方、韓国にのこった人々が多くの差別的経験を受けていることがわかった。また、現在では「アメラジアン」のルーツが非常に多様化しており、養子縁組のプロセスの中に、「人種」的な外見の指標によって移民可能かが決められてしまうという事例があることも明らかとなった。これらの調査によって、先行研究では指摘されてこなかった新たな知見を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究や具体的なフィールドワークの結果、沖縄への予備・本調査の結果、重要なデータを得ることができた。特に、「社会編成論」に関して社会構築主義の一分析視座と位置づけその特徴をまとめた論文を作成していく。また沖縄のフィールドワークの成果もまとめ、これらの論文を学会誌等に投稿する。 今後の研究全体の方向性としては、得られたデータを詳細に分析し、さらに受け入れ研究者である伊藤るり教授(一橋大学)とのディスカッションを行うことによって、沖縄の事例と関東圏のデータとを比較検討することで本研究の問題関心をより鮮明に描きだすことができることがわかってきた。沖縄では基地の集中、基地街の形成、「混血児」・「アメラジアン」に対する地域住民の意識の違い、当事者の経験の違い、沖縄の門中などの文化的慣習の違いがある。この文脈の中で「アメラジアン」の事例を関東圏との比較から捉えていくためには、当初計画していた韓国・沖縄・関東圏という三地域の比較研究よりも、沖縄と関東圏という地域に絞る方がより実現可能性が高い。今後の韓国を含めた分析へと発展させていくためにもまずは関東圏と沖縄において比較研究を実施し分析を深化させていくことが重要である。そのため、平成27年度においては、再び沖縄での第二次本調査を行い、インタビューデータを実施し第一次調査の資料と合わせて分析するとともに、沖縄の地域的特徴をとらえる資料を収集する。その上で、関東圏で得られたデータと比較分析を実施する。その成果を学会論文等で発表するとともに、学位論文を構成していく。
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