研究課題
平成28年度は、共沈プロセスそのものの理解を基に、微量元素のバライトへの共沈過程を分子レベルで系統的に理解することで、新たな古環境復元の手法の開発や有害元素の効果的な除去法の確立といった、地球化学・環境化学的な応用を行った。地球化学的な応用として、天然の様々な環境で沈殿する鉱物であるバライト中に取り込まれるセレン(Se)とヒ素(As)のオキソアニオンに着目して実験を行い、バライト中のSeの価数比(Se(IV)/Se(VI)比)とヒ素の価数比(As(III)/As(V)比)が共存する水のEhを反映するかどうかを示すことで、「バライト中に取り込まれた微量元素の組成および化学種を併用した水質計の開発」を行った。これらの水質計を用いることで、過去の海洋環境の詳細なEh、pH、温度といった情報の復元が可能となり、今後の地球進化の研究に大きく貢献すると考えられる。また環境化学的な応用として、バライトは高い安定性と除去効率を持ち、周囲の環境が変化しても元素を保持し続ける性質を利用した、「バライトを用いた有害元素の安定化処理技術の開発」を行った。これらの研究は、一般的に廃棄物固化体からの溶出を抑制する技術が乏しいセレンなどの陰イオン形態、特にオキソアニオン形態を取る放射性核種を対象としており、放射性廃棄物の処理処分技術においてブレークスルーとなり得る有望な研究であり、「バリウム系有害物質除去資材の開発」として東京大学・新日鉄住金セメントとともに現在特許の申請を準備中である。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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Chemical Geology
巻: 447 ページ: 59-69
http://doi.org/10.1016/j.chemgeo.2016.10.016