研究課題/領域番号 |
14J06595
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
松本 圭司 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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キーワード | 光周性 / 幼若ホルモン / チャバネアオカメムシ |
研究実績の概要 |
多くの生物は1日の昼や夜の長さ (光周期) に反応する光周性により季節に適応している。チャバネアオカメムシは明瞭な光周性を示し、メス成虫は短日条件で幼若ホルモン (JH) 合成を抑制し、卵巣を発達させない。光周期によるJH合成調節の神経内分泌機構はどの昆虫においても未だ明らかになっていない。これは、光周性を示す昆虫でJH合成調節分子がほとんどわかっていないことが一つの原因である。本研究は、チャバネアオカメムシのJH合成抑制物質・ニューロンを明らかにすることを目的とする。 本年度、他の昆虫で知られているJH合成調節物質と、脳抽出物のJH合成に対する影響を調べた。ゴキブリのJH合成抑制ペプチドとして知られている3種類のアラトスタチン、バッタ等でJH合成の調節に関わることが知られているオクトパミン、ドーパミン、セロトニンについて調べた結果、本種のJH合成活性に影響は見られなかった。これまでに本種の脳の80%メタノール抽出物は強いJH合成抑制作用を示す事がわかっている。そこで次に、脳抽出物を加熱処理またはトリプシン処理し、JH合成への影響を調べた。加熱処理 (100℃30分) した脳抽出物は無処理のものと同様に強いJH合成抑制効果を示した。一方、37℃16時間のトリプシン処理により、脳抽出物のJH合成抑制効果は見られなくなった。以上より、本種のJH合成抑制物質はリジンまたはアルギニン残基を持つペプチドであることが示唆された。 さらに、JH合成調節に関わる脳領域を特定するため、特定の脳領域を外科手術により除去する実験をおこなった。脳を微小破壊した手術個体と、脳を傷つけない偽手術個体 (頭部の表皮クチクラを切り開き、背側脳を露出させすぐにクチクラを被せたもの) においてどちらも死亡率が高く約40%となった。また、生存個体の卵巣発達については調べたが、JH合成活性の測定には至らなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予定していた脳の微小破壊実験の死亡率が高く、手術方法の確立に予想以上の困難をきたしたため。
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今後の研究の推進方策 |
脳の微小破壊実験が困難であることから、今後はJH合成抑制物質の特定に集中する。JH合成抑制物質がペプチドであることが示唆されたので、MALDI-TOF MSにより脳抽出物に含まれる物質の分子量をモニタリングしながら、HPLCにより分画し、JH合成抑制効果が見られるフラクションを調べる。
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