研究課題/領域番号 |
14J06649
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
浦西 洸介 金沢大学, 医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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キーワード | Dax1 / Gata6 / T / ES細胞 |
研究実績の概要 |
マウスES細胞において、核内受容体Dax1はOct3/4を中心とする転写因子ネットワークに属しており、自己複製維持において何らかの役割を果たしていると考えられる。本研究ではES細胞におけるDax1を介した自己複製維持機構の解析を行った。4HT添加によってERCreERを活性化することによって、Dax1遺伝子をノックアウトできるDax1コンディショナルノックアウトES細胞を樹立し、遺伝子発現の変化を検証したところ、4HT添加後2日では未分化マーカー、分化マーカーどちらも大きな遺伝子発現の変化は見られなかった。短期では遺伝子発現の変化が見られなかったため、長期での遺伝子発現の変化を検証したところ、4HT添加後7日では未分化マーカーの発現では変化は見られなかったが、分化マーカーでは内胚葉系マーカーであるGata6と中胚葉系マーカーであるTの発現上昇が見られた。 Dax1ノックアウト状態でES細胞が自己複製を行えるかどうかを検証するために4HT添加後に細胞をピックしてDax1ノックアウト細胞のシングルクローンを樹立し、長期培養が可能であるかを検証したところ、長期培養が可能であることが明らかになった。 また、Dax1がPRC2複合体の構成因子であるEedやEzh2と結合できることを既に見出している。そこでDax1がヒストン修飾に何らかの影響を与えているかどうかを検証した。全体的なヒストン修飾の状態をウェスタンブロットにて確認したところ、ノックアウト前後で違いは見られなかった。 以上より、ES細胞においてDax1はGata6やTをターゲットとしている可能性や、Dax1ノックアウトES細胞は自己複製が可能であるが、分化が進んでいる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はDax1がES細胞の自己複製維持において、内胚葉系マーカーGata6や中胚葉系マーカーTをターゲットとして抑制していることを見出した。更に、ES細胞はDax1をノックアウトした状態でも自己複製が可能なことから、Dax1ノックアウトESは未分化状態を維持していること、Dax1ノックアウト状態では全体的なヒストン修飾の変化が見られないことからDax1は直接的にはヒストン修飾に関わっていない可能性を見出した。これらにより、研究の目的にあるDax1のターゲット遺伝子候補の探索やDax1のノックアウトによるグローバルなクロマチン修飾変化の検証、Dax1とヒストン修飾との関連性を明らかにするという目標が達成されたので、概ね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
Dax1ノックアウト細胞が自己複製可能であることが明らかとなったため、他に明らかとなっているGata6遺伝子やT遺伝子の発現上昇に着目して研究を行う。Dax1がGata6やTの発現制御領域に作用していることは既に報告されているが、Dax1がどのような機序をもってこれらの遺伝子を抑制しているかは未だ明らかになっていない。Dax1の作用機序の詳細を明らかにするために、Dax1のターゲット配列の決定や、これらの遺伝子のDax1作用部位近傍にDax1と相互作用を持つ他の転写因子の結合配列が無いかを探索する。他の転写因子の結合配列が発見されたならば、Dax1が直接遺伝子に結合しているか、またはその転写因子を介して結合しているのかを検証する。また、全体的なヒストンの変化は見られなかったが、Gata6やTの発現が変化しているため局所的なヒストン修飾の変化があることが考えられる。そのため、Dax1ノックアウト状態でのGata6とTのDax1作用部位周辺のヒストン修飾の変化を検証し、ローカルなヒストン修飾に対するDax1の影響を明らかにする。 また、他のグループにより、Dax1ノックアウト時における遺伝子発現変化のマイクロアレイ解析が行われているので、そのデータを参照して新たなDax1のターゲットと思われる遺伝子をピックアップする。それらの遺伝子のLIF応答性などを検証し、Dax1がそれらの遺伝子をどう制御しているのか、また、それらの遺伝子がDax1の下流でES細胞の自己複製維持にどのように与えているかを検証する。
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